[2023_05_24_07]不透明な100億円上乗せだけじゃない電気・ガス補助事業の「異例ずくめ」 経済産業省の開示は「黒塗り」(東京新聞2023年5月24日)
 
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不透明な100億円上乗せだけじゃない電気・ガス補助事業の「異例ずくめ」 経済産業省の開示は「黒塗り」

 高騰する電気代などの国民負担を抑える経済産業省の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」で、事業の事務を担う大手広告代理店の博報堂に支払う管理費を、同社側の提案額より約100億円も上乗せして契約した問題。事業者を公募した期間の短さなど、発注の経緯は異例ずくめだった。経産省は新型コロナ対応での給付金事業でも、委託や外注が繰り返された問題で批判を浴びており、識者は教訓を生かさない対応を問題視する。(山口哲人)

 ◆情報開示に消極的な経産省

 「(上乗せした)100億円のうち、信用保証料が53億円を占めるとは承知していなかった」。西村康稔経産相は4月の参院経済産業委員会で、上乗せの主な内訳が信用保証料だったと説明し、事前に知らされていなかったと明かした。
 一連の経緯からは、情報開示に消極的な経産省の姿勢が浮かび上がる。
 事業は公募で行い、経産省が締め切ったのは昨年11月で、博報堂が提案した管理費は約218億円。1カ月後の発注時に約1.5倍の約320億円に膨張した。
 疑問に思った立憲民主党の田島麻衣子参院議員が増額分の内訳を資料請求したが、経産省が開示しなかったため、3月の参院予算委で追及。だが、経産省は内訳を明かさず「審査体制を強化した」などと抽象的な説明に終始した。
 ようやく信用保証料などの内訳を示したのは、後日の参院予算委の理事会。4月の国会審議で「なぜ答えなかったのか」と迫られた経産省幹部は「博報堂から、明らかにすると競争上の利益を害すると申し出があった」と釈明したが、増額の妥当性に関する疑問は残ったままだ。

 ◆公募期間わずか8日、再委託50%超過…過去の反省生かされず

 経産省はコロナの影響を受けた中小企業を支援する「持続化給付金事業」で、大手広告会社の電通などが設立した団体に給付事務を発注した後、9次の下請けまで再委託や外注が繰り返され、税金の無駄遣いと追及された「前科」がある。
 批判を受けた経産省は2021年、事業者の公募期間を「原則20日以上」とするルールの厳格化をしたと説明する。
 だが、今回の補助金事業は「緊急性のある事業は期間を短くすることも可能」との例外規定を適用し、公募はわずか8日間。応募は博報堂を含め2社だけだった。過去の反省を生かしているようには見えない。
 持続化給付金事業で問題となった再委託や外注を容認する姿勢も改めようとしていない。同事業では、1次団体から事務が再委託された比率は95%に上ったが、今回も71%の228億円が委託・外注費だ。経産省は発注先に「原則50%以下」を求める一方、理由書を提出すれば超過も認めており、博報堂に適用した。経産省は田島氏の請求に応じて理由書を開示したが、内容の部分は全て黒塗りになっている。
 元会計検査院局長で日大の有川博客員教授は「例外を適用するなら理由の積極的な説明が必要だ。最大の問題は事業者選定後の上乗せ行為で、経産省の情報開示の姿勢は、持続化給付金問題を本当に反省しているのか疑問だ」と批判した。

 公募式 官公庁が民間企業などに仕事を発注する際、請け負う事業者を選ぶ方法の一種。応募があった事業者の提案内容などを比較、審査した上で選定する。公募に際し、あらかじめ予算規模を提示する場合も多い。一方、入札は価格競争に主眼が置かれ、最低額で応札した事業者が原則落札する。
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