[2023_05_23_04]日本・千島海溝地震、4道県に救援15万人 政府計画(日経新聞2023年5月23日)
 
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日本・千島海溝地震、4道県に救援15万人 政府計画

 日本海溝・千島海溝沿いを震源とする巨大地震への対応を巡り、政府の中央防災会議は23日、救助や物資輸送など応急対策に関する計画を示した。大きな被害が想定される北海道、青森、岩手、宮城の4道県を対象に、被災地外の警察、消防、自衛隊から計約15万人を派遣する。積雪寒冷地という特殊性を考慮し、南海トラフ巨大地震と同規模の人員を投入して迅速な救助活動につなげる狙いがある。
 静岡から九州まで広域に被災する南海トラフ地震の場合、応援部隊の規模は最大約14万7000人。日本・千島海溝の地震の方がやや多い。甚大な被害が出る自治体が10県と想定される南海トラフに比べて少ないため、応援に回せる人員を増やすことができる。
 北海道・東北の地理的な条件も関係している。日本・千島海溝地震は寒さの厳しい時期に発生した場合、通常より救助のハードルは増す。本州からの陸路が限られ、土地も広大な北海道などは、支援が行き届くまでに時間がかかるためだ。
 被災者は建物倒壊や津波から助かっても、着のみ着のまま逃げれば、寒さで体は弱る。救命救急は積雪で間に合わない事態も想定される。人員と物資をどれだけ早く届けられるかによって、被害の程度が大きく変わる可能性がある。
 このため、南海トラフと同様に、生存率が下がるとされる3日(72時間)以内に救助や医療、物資、燃料を届けるための緊急輸送ルートを確保する。全国に約1750ある災害派遣医療チーム(DMAT)も集め、半日後には現地での活動を開始する。
 物資は発災後3日間は家庭や自治体の備蓄で対応し、4〜7日に食料や毛布など必要な救援物資を調達して届ける。ガソリンなど燃料不足も見込まれることから、石油業界には系列を超えて緊急輸送ルート上のスタンドへの優先供給も求めた。移動基地局車などを活用し、通信を確保する必要性も指摘した。
 支援に赴く側も積雪寒冷地に対応した準備が欠かせない。緊急通行車両などは冬タイヤの装着を徹底。道路の積雪・凍結を踏まえた計画的な除雪を実施する。燃料や資機材、人員の輸送に時間がかかることも考慮する必要があるとした。

 課題は実効性の確保だ。今回の計画は警察や消防、DMAT、民間企業などがそれぞれ発災から1〜3日に取り組むべき活動を時系列で設定した。各機関が的確に行動することが欠かせず、発災時にスムーズに運用するには、机上の想定にとどまらない訓練をかさねて問題点を洗い出す必要がある。国は2023年度中に、今回の計画に基づいた広域での訓練を実施する予定だ。

 ▼日本海溝・千島海溝地震 東北沖から北海道・日高沖に続く日本海溝と、十勝沖から千島列島沖にかけての千島海溝周辺で発生する地震。歴史上、マグニチュード(M)7〜8級の地震が頻発している。政府は、北海道、青森など7道県で最大19万9000人に上るとされる想定死者数を、津波避難施設の整備や避難計画の策定を進めることにより、8割減らす目標を掲げている。〔共同〕

 寒冷地で被災、低体温症に注意 専門家「冬場の訓練欠かせず」 

 寒冷地での被災は低体温症や様々な疾患を引き起こしかねない。日本赤十字北海道看護大の根本昌宏教授(寒冷地防災学)は「特に乳幼児や高齢者は基礎代謝が低く、体温を維持するのが難しい。直腸など身体の中心部である深部体温が35度以下となる低体温症にかかりやすい」と指摘する。
 根本教授によると、低体温症の中等症以上では意識がもうろうとするなどし、医療機関で早期の治療が求められる。低体温症を防ぐポイントとして@津波被害などで身体を濡らさずに外気温から隔離できる場所に避難するA毛布や寝袋で身体を保温するB湯たんぽなどで特に腹部から心臓にかけて温めるCインスタントのお汁粉やようかんなどカロリーの高い食品を摂取する――をあげる。
 自治体に対しては、冬場に避難ルートや避難所運営の訓練と検証が不可欠とした。高齢者など要配慮者を避難所の床に雑魚寝させると、冷たい床の¥温度が身体に伝わり、低体温症を発症するリスクが高まるとして「地域の実情に応じて、段ボールベッドや簡易ベッドを十分に備えておく必要がある」と話す。
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