[2023_03_06_03]南海トラフと“連動地震”の可能性も 3分で津波到達 市街地から富山湾に走る34キロ活断層のリスク(TBS2023年3月6日)
 
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南海トラフと“連動地震”の可能性も 3分で津波到達 市街地から富山湾に走る34キロ活断層のリスク

 2023年3月6日(月) 20:20
 巨大地震の時代とも言われる21世紀は、いつどこで地震が起きるかわかりません。内陸の地震では世界最大級といわれるトルコ・シリア地震からきょうで1か月となりました。500年以上動いていなかった活断層が250キロにもわたって動いたことで、大きな被害が生じています。
 国内では、南海トラフ地震が切迫性を増していますが、実はこの地震に連動して富山県でも大きな地震が起きる可能性もあると専門家は指摘します。
 中でも、被害が大きくなるといわれるのが市街地から富山湾に伸びる34キロの活断層。富山湾を震源に、わずか3分で沿岸に津波が到達するという試算もあります。知られざる巨大地震のリスクとは…。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「陸から海底までずっとひと続きにつながっている断層ですから。地震と同時に津波がくるということで、逃げる時間がないんですね」
 構造地質学が専門で、活断層の研究を続ける富山大学の竹内章名誉教授。富山市の市街地から富山湾に走る活断層がずれると、富山湾で津波が発生。わずか3分で津波が沿岸へ到達し、地震と津波が同時に襲う可能性があると指摘します。
 富山県には数々の断層があります。そのうちの一つが砺波平野断層帯。
 時代は戦国時代の1586年1月。天正地震が発生しました。震度は6から7、地震の規模を表すマグニチュードは7.8と推定されています。富山から岐阜に続く砺波平野断層帯西部で地震が起きたのです。
 この地震で、現在の高岡市にあった木船城が倒壊。城主は、あの前田利家の弟、秀継でしたが、妻とともに圧死。これをきっかけに木船城は廃城となりました。城下にも甚大な被害が出たとされています。
 さらに…。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「こうやって掘って…筋が見えるでしょ?」

 河原に黒い線が…目に見える活断層

 河原の石に続く長い線。断層がずれた跡だといいます。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「大きく滑ったところは、いろんなものが混ざるので黒くなるんですね」
 砺波平野断層帯に連動して庄川断層がおよそ100キロにわたって動いたのです。その痕跡が残っていました。

 富山大学 竹内章名誉教授:
 「天正地震のときには大体10秒、20秒の間に(断層が)何メートルもずれるという、そういう動きをするんですね。それそのものが地震なんです」
 先月6日に発生したトルコ・シリア地震では、500年以上動いていなかったトルコ南東部の活断層、「東アナトリア断層」が250キロにわたって動きました。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「過去に起きた直下型地震のなかでも5番目に大きいなんていう統計がありますけども。地球上で起きた非常に大きな被害地震だといえる。非常に長い断層が動いたんですけども、その長いというのはプレートの境界だから長いわけですね。それによって、周辺の活断層が連動して地震を起こしているということなんですね」
 「東アナトリア断層」は、アラビアプレートとアナトリアプレートの境界にあり、そこが大きく動くとともに別の活断層に連動したといいます。4つのプレートがぶつかる日本も、トルコと似ている状況なのです。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「南海トラフ地震がプレート境界で起きたときに、その続きである糸魚川静岡構造線が活断層として動くことも考えられますし、そういう連鎖とは別の連鎖で、南海トラフ地震の前後に富山の活断層が動く連動もあると思う」
 南海トラフ地震に連動して、日本列島の中央部に位置する全長150キロの「糸魚川静岡構造線」が動いたり、富山県の活断層に連鎖したりする可能性があるといいます。

 湾内から市街地へ…衝撃の津波シミュレーション

 富山県には7つの断層がありますが、なかでも動けば被害が大きくなるとされるのが「呉羽山断層」。富山市八尾町周辺から富山湾まで全長34キロにわたる活断層です。

 もし呉羽山断層が動いたら、どのような被害があるのでしょうか?
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「陸から海底までずっとひと続きにつながっている断層ですから、地震と同時に津波がくるということで、逃げる時間がないんですね。これは非常に恐ろしいことだと思います」
 呉羽山断層は、海中まで伸びていて、動けばあっという間に沿岸に津波が到達するといいます。
 これが、富山大学津波防災プロジェクトが作成した津波のシミュレーションです。断層がずれて津波が発生。赤色が押し波、青色が引き波を示します。津波が湾内に広がり、沿岸に押し寄せる様子がわかります。 富山大学 竹内章名誉教授:
 「県東部の滑川、黒部。すぐ津波が来ますね」
 地震発生からわずか3分ほどで富山湾東部の沿岸に津波が到達。5分以内に西部の沿岸にも津波が到達しました。その高さは最高で5メートル。県が調べた別のデータでは、地震発生からわずか2分で富山市に津波が到達。高さは5.5メートルに達する試算もあります。

 津波は川をさかのぼって街へ

 沿岸に到達した津波はその後、県内の7つの河川をさかのぼり、街にも押し寄せます。

 富山大学 竹内章名誉教授:
 「沿岸に最大波高2メートル、3メートルの津波がやってきますよね」 「そうするとその波は河口から河川に入り込んでいきます。波は水位があればあるほど、どんどん川を遡上していく」
 富山県は、北陸地方の中でも特に津波到達までの時間が短いといいます。
 その理由は…。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「これは海底の断層が(沿岸と)非常に近いということですね」
 呉羽山断層は、海と陸をまたいで走るいわゆる「海陸断層」で、沿岸との距離が近く、津波の到達時間が短いのです。
 さらに富山湾は、 能登半島や佐渡島に挟まれ、津波が湾の外に広がらずに何度も沿岸に打ち寄せるといいます。
 呉羽山断層の痕跡を竹内名誉教授とともに訪ねました。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「あのカーブミラーのところ…ここなんだけれど」

 「家の基礎がですね、ブロック塀の下の基礎がななめになっているでしょ」
 市街地にあるブロック塀。そこに沿って道路がななめになっています。これが、かつて呉羽山断層帯が動いた痕跡だといいます。
 さらに別の場所でも。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「この電柱のあたりから傾斜がわかるようになります。歩き始めた平らなところから今立っているところまで、高さの差が2.4メートルという結果になりました」
 呉羽山断層が全長34キロにわたって上下にずれたのです。
 ずれの大きさは、平均で2メートルほどですが、この断層は市の中心部に走っています。

 次に活断層が動くのはいつ?備えは?

 呉羽山断層が最後に動いたのは3000年ほど前だといいますが…。
 富山大学 竹内章名誉教授:
 「呉羽山断層が次の地震を起こすのはいつかわかりませんけど、3000年前と同じようなことがまた起きるわけですね」
 「これがスパっときれると、真上に立っている建物というのは非常に打撃的なというか、全壊になってしまう」
 「断層がどこを通るのか、地盤の固いやわらかいというような条件をよく知っておいたほうが良い。あらかじめ」
 断層の上にある建物は、全壊する恐れもあるといいます。
 文部科学省によりますと、30年以内に呉羽山断層で地震が起きる確率の最大値は5パーセント。最も切迫度が高い「Sランク」に含まれています。
 国土地理院によれば、日本とその周辺では、世界で起こった地震の10分の1もの地震が発生しているといいます。「活断層」の定義は、数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを言う場合と、260万年前以後に活動した証拠のある断層を全て呼ぶこともあるそうです。日本にある活断層は2千以上。さらに地下に隠れ、地表には現れていないものもたくさんあるといいます。
 呉羽山断層が次に動くのはいつのことなのか…3000年という年月は、地球46億年の歴史から見ると、つい最近のことかもしれません。
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