[2023_05_16_06]6月から東京電力の規制料金値上げへ 動いていない原発維持費の算入も認められる(東京新聞2023年5月16日)
 
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6月から東京電力の規制料金値上げへ 動いていない原発維持費の算入も認められる

 6月使用分から東京電力エナジーパートナー(東電EP)の家庭向け規制料金の値上げが認められる見込みとなった。値上げ幅は、当初の申請時より圧縮されたものの、稼働していない原発を維持するための費用は原価として認められ料金に算入された。有識者らからはこの方針に疑問の声が上がる。(砂本紅年)

 規制料金 2016年の電力小売り全面自由化前からあり、燃料調達や発電・送配電のコスト、人件費など電力供給に必要な原価を積み上げて反映させる「総括原価方式」で決める料金。自由化以降は、新電力を含め電力会社の裁量で決められる「自由料金」が導入されたが、電力会社間の十分な競争環境が整うまでの経過措置として、大手電力10社に残っており、東京電力EPの場合、全体の契約件数のうち約7割の約1560万件が規制料金にあたる。値上げには国の認可が必要。

 「(東京電力福島第一原発の)事故後、一度も原発から電力の供給を受けていないのに、原発発電事業者に毎年数千億円も支払っている。この支払いがなければ原価が下がり、電気代も安くなるはず」。4月中旬に開かれた公聴会で意見を述べた一人、相模原市の堀江鉄雄さん(75)は話す。
 東電EPが申請した原価のうち、原発由来の電力購入費用として計上している金額は年平均で4961億円。東電ホールディングス(HD)、日本原子力発電、東北電力への支払いとするが、大半は東電HD向けとみられる。
 原発が動かなくても、電力購入料金が発生するのは、原発建設時などに発電事業者と結んだ建設から廃炉までの費用を支払う「長期契約」があるためだ。経済産業省は、今回の審査でも東電EPを原発の共同開発者と位置付け「安全に維持管理する費用や将来の稼働に向けた投資に必要な費用についても負担する義務がある」と、算入を認めた。
 東電EPも原発発電事業者との長期契約を続けるのは「将来の再稼働による原価削減のメリットを享受するため」と強調。今年10月に柏崎刈羽原発(新潟県)の7号機を、2025年4月に6号機を再稼働させると仮置きし値上げ幅を算定。再稼働で削減されるコストを年900億円とはじく。
 だが、実際には地元の東電側への不信感は強く、再稼働時期は見通せていない。原発維持のための費用を原価とすることに、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「長期契約による支払いのために、非常に高い電力を原発から買って消費者に負担させていることになる。原価に入れるのは、いささか承服しがたい」と疑問視。この契約がなければ、値上げ幅をさらに2%以上圧縮できると試算を示した。
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