[2023_05_13_03]汚染水と1号機の圧力容器基礎損傷について もし圧力容器が格納容器に落下した場合 水側(地下水)に大量の放射性物質が溶け出すことになる海洋放出など議論している場合ではない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2023年5月13日)
 
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汚染水と1号機の圧力容器基礎損傷について もし圧力容器が格納容器に落下した場合 水側(地下水)に大量の放射性物質が溶け出すことになる海洋放出など議論している場合ではない 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

 報道のように2023年3月に福島第一原発1号機の圧力容器の基礎を水中ロボットで調査したところ、全周の損傷が観察された。もし圧力容器が格納容器に落下した場合、格納容器の底が抜ける可能性もある。その場合、水中への落下となり、崩壊熱もかなり下がっているから、事故初期のように放射性物質が大気中に飛散することはないだろう。しかし水側(地下水)に大量の放射性物質が溶け出すことになる。
 圧力容器が落下しても建屋に流入する地下水の量は変わらないので、結果として濃度が高くなった汚染水が発生することになる。現在、汚染水を汲み上げて多核種除去設備により放射性物質を除去している。よく名前が出る「ALPS」はそのうちの一つであるが、ALPSイコール多核種除去設備ではない。がれきの中を通ってくる汚染水には様々な雑物が溶け込んでいて、いきなりALPSに通せないので前処理装置などが設置されている。
 ALPSにはいくつかの操作工程があるが、大雑把にイメージでいうと家庭用浄水器と似ている。浄水器は一定期間でカートリッジを交換する必要があり、交換せず放置していると浄水能力が失われて入った水がそのまま出てくるだけになる。ALPSも同じでカートリッジに相当する部分を順次取り出して交換しているが、取り出した使用済の分は放射性物質を吸着しているから、放射性廃棄物として管理する必要がある。その容器は増える一方で、どうやっても減らす方法がない。
 ここで問題は、圧力容器が落下して濃度が急に上がった想定外の汚染水が来たらどうなるかである。ALPSは一定レベルの汚染水を条件として設計・運転されている。浄水器の例でいえば、水道水としての基準をクリアした水に対して設計されているのであって、ここにいきなり泥水を通したらどうなるかを考えればよい。処理水の海洋放出がどうこう以前の話で、トリチウムどころか処理装置の機能全体が失われる。
 規制委員会も、東電に対して落下時の影響について早急に検討するように求めるとしているが、ネットを調べても「処理水の安全性」「海洋放出が復興への近道」などという情報が大量に流されている一方で、重要なデータはさっぱり出てこない。規制委員会が公開している資料にも黒塗り部分があるような状態である。海洋放出など議論している場合ではない。
KEY_WORD:福1_圧力容器土台に損傷_:FUKU1_:汚染水_: