[2023_04_28_08]原発政策の大転換なのに…拙速な審議、再生エネなど5本の「束ね法案」が衆院で可決(東京新聞2023年4月28日)
 
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原発政策の大転換なのに…拙速な審議、再生エネなど5本の「束ね法案」が衆院で可決

 原発の60年超運転を可能にする束ね法案「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が27日、衆院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決された。法案は原子力規制や再生可能エネルギーに関係する5本の法律をまとめて改正するもの。原子力政策の大転換となるのにもかかわらず、審議は不十分なまま1カ月足らずで衆院を通過した。参院で議論が深まるかも見通せない。(小野沢健太)

 ◆原発「60年超運転」にも答弁あいまい

 焦点となった原発の60年超運転。束ね法案のうち経済産業省が所管する電気事業法で、新たに運転期間の規定を定めた。「原則40年、最長60年」とする枠組みは維持した上で、再稼働審査や行政指導などによる停止期間を運転年数から除外、その期間分について60年を超えて運転ができることになる。どういうケースが除外に該当するのか。衆院経済産業委員会で質問が相次いだが、政府側はあいまいな答弁に終始した。
 審査が長期化している原発のほとんどは、電力会社側の説明不足や資料不備が指摘されている。電力会社の能力不足で停止期間が長くなっても、将来的な運転期間が延びるのか。この疑問に、政府側は「具体的な運用は、法改正後に決める」「電力会社からの申請内容を踏まえ、個別に判断する」などと述べるにとどめた。

 ◆委員会の議論は25時間 課題の掘り下げは…

 新制度では、延長運転の可否や期間は経産省が審査し認可するようになる。どのような基準で審査し、その過程は公開されるのかについても「今後の検討」とされた。
 束ね法案になったことで再エネや廃炉、放射性廃棄物の最終処分など広い分野で多岐にわたる質問が出たが、経産委での議論は計7日間の25時間余り。一つ一つの課題を掘り下げることはなかった。

 ◆「法改正の中身を分かりにくくすることが本質」

 原発の60年超運転のほか、原発活用による電力安定供給を「国の責務」と原子力基本法に明記するなど、東京電力福島第一原発事故後に抑制的だった原子力政策は、一気に推進へとかじを切る。昨年7月に岸田文雄首相が原子力政策で「政治決断」が必要な項目の検討を指示してからわずか9カ月で、参院での議論を残すだけになった。
 17日には、環境や法律の専門家ら20人が記者会見した。礒野弥生・東京経済大名誉教授は5本の法案を束ねた手法に対し「国民にとって法改正の中身を分かりにくくすることが、政府の意図の本質だ」と批判。「福島事故後、国民は原発推進に重きを置くことを納得していない。それなのに対話や議論することもなく、国民を無視して政策転換をする政府の姿勢は許されない」と憤った。
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