[2023_03_10_08]南極の氷の下から宇宙ニュートリノを検出(島村英紀2023年3月10日)
 
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南極の氷の下から宇宙ニュートリノを検出

 世界最大のエジプト・クフ王のピラミッドで、広い空間が見つかったことが報じられている。この空間が何を意味するものか分からない.。巨大なピラミッドの重さを分散させるために、ただの空間が設けられた可能性がある。
 この発見は宇宙に満ちている「ニュートリノ」によるものだ。ニュートリノは毎秒数十億個という膨大な量が宇宙から降って来ている。ニュートリノは電荷を持たず、普通の物質とはあまり作用しないために私たちの体を通り抜けてもなにも感じないし、害もない。
 実際にニュートリノが発見されたのは1953年。わりに近年のことだ。オーストリアの物理学者ボルフガング・パウリのエネルギー保存の法則による予言から20年以上がたっていた。
 ニュートリノは水や氷に含まれる水分子に衝突してチェレンコフ光という光が発生し、ミューオンをはじめ、粒子を作り出すことがある。
 ミューオンは岩の性質によって透過率が違ってくる。この性質を利用してピラミッドの未知の空間を見つけたのだ。
 このほか最近ではミューオンを用いて火山の内部構造を画像化する研究が東京大学で進められている。マグマがどこまで上がってきているのかがわかるのが目標だ。難点はミューオンが上から降ってくるために地面から下のデータが得られないことだ。
 同様の手法で福島第一原子力発電所の炉心溶融の現状を調査するためにも使用された。溶け落ちた燃料が見えた。
 ではニュートリノはどこから来て、宇宙に満ちているのだろう。どこでこれほど大量に作られたのか、不明なままだった。
 だが「アイスキューブ・ニュートリノ観測所」が観測に成功した。ここは南極のアムンゼン・スコット基地の地下の分厚い氷の中に設置されており、ここでチェレンコフ光を捉えた。ここでは86本の縦穴でニュートリノによって発生した光を検出している。縦穴は86本あり5000個のセンサーがある。深さは最大2450メートル。全体として望遠鏡の指向性を出すために使われる。縦穴を沢山掘りやすいために南極の氷が利用された。
 この観測所で宇宙に満ちているニュートリノの発生源が見つかった。今年になってくじら座にある渦巻銀河「M77銀河」で、大量のニュートリノが生成されていることを明らかにしている。
 この銀河はニュートリノ生成銀河の代表的なものだろうと考えられる。ニュートリノは超新星から出ることも分かった。M77銀河は中に超新星を含む。ここ数百年間に発生したのものとしては地球に一番近い超新星「SN 1987A」では、大量のニュートリノの放出が確認された。M77銀河は地球から4700万光年離れている。1987Aよりずっと遠くにあるが、それでも宇宙に満ちている大量のニュートリノが生成されているのだ。
 アイスキューブ・ニュートリノ観測所にもっと大きく深い検出器を設置すれば、さらに多くのニュートリノを検知できるようになるだけでなく、より速く、より高エネルギーを帯びたニュートリノの検出も可能になるだろう。
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