[2023_03_04_03]建屋直下の活断層「ない」判断に約7年 志賀原発は再稼働へ前進? 待ち受けるハードルは(東京新聞2023年3月4日)
 
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建屋直下の活断層「ない」判断に約7年 志賀原発は再稼働へ前進? 待ち受けるハードルは

 廃炉の瀬戸際に立っていた北陸電力志賀原発2号機(石川県)は一転、再稼働に向けて前進した。原子炉建屋直下にあるとされた「活断層」の存在を、原子力規制委員会は3日の審査会合で否定。原発推進を目指す岸田政権にとっては弱い追い風となるものの、長く審査が停滞する原発の早期再稼働は見込めない。(小野沢健太、増井のぞみ)

 ◆建設前に描かれた地層のスケッチから始まった

 「おおむね妥当な検討がなされている」。地震津波対策の審査を担当する規制委の石渡明委員は、約1時間20分の審査会合を淡々と締めくくった。2016年4月に規制委の専門家チームが「活断層の可能性あり」とした判断が覆り、長く続いた議論が終わった。
 16年時点の判断の決め手は、原発建設前に描かれた地層のスケッチ。最も確実な情報になる地層の形は、原発の建設工事ではぎ取られて観察できず、過去の資料だけが頼りだった。評価書に「限られた情報に基づく」と付言されるほど、データが不足していた。
 北陸電は活断層評価を覆そうと、膨大な「証拠」を集めた。柱となったのは、地中の鉱物の分布から断層の活動性を判断する「鉱物脈法」という手法。地層の形を見ることなく、多くのデータを採取できた。石渡委員は「将来、活動する可能性がある断層ではないと判断できる証拠がたくさん得られた」と評価した。

 ◆具体的な事故対策はこれから その先には地元の同意も必要

 審査は前進したが、規制委への申請から8年7カ月たってようやく最初のハードルを越えたに過ぎない。今後、敷地周辺の断層の活動性を検討した上で、どれほどの大きさの地震や津波を想定するべきかを議論し、それに耐えられる設備対策の議論も続く。
 基本的な事故対策の審査が終わっても、設備の詳細な設計や工事計画、その後の管理手順の審査にも適合する必要がある。実際の稼働には、地元自治体の同意も必要となり、多くの高いハードルが待ち構える。
 北陸電は、今回の審査での「証拠」集めに100億円を投じた。再稼働に向けた事故対策費は少なくとも1000億円台後半に上ると見込んでおり、多額の投資に見合うだけの結果を出さなければ経営悪化に直結しかねない状況は変わりない。

 ◆政府の目標は「30年度に30基程度稼働」

 東京電力福島第一原発事故から12年を前に、岸田政権が原発推進にかじを切った中、志賀2号機と同じく基本的な事故対策の審査が計7原発10基で続く。うち、日本原子力発電敦賀2号機(福井県)、中部電力浜岡3、4号機(静岡県)、新設の中国電力島根3号機(島根県)、建設中の電源開発大間原発(青森県)の5基は、敷地内の断層の議論が終わっていない。
 敦賀2号機は、原電が審査資料の地質データを書き換え、2年半以上にわたり審査が止まった。規制委は昨年10月に審査再開を決めたが、本格的な議論にはなっていない。浜岡3、4号機は断層の評価に手間取り、大間も審査資料に誤りが見つかるなど、いずれも電力会社の説明が不十分な状況にある。
 政府は30年度に30基程度稼働させる目標を掲げる。既に稼働済みの原発に審査中の原発を全て加えても達成は難しく、計画は絵に描いた餅に過ぎない。
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