[2023_03_03_04]北陸電力志賀原発の敷地断層「活断層でない」規制委審査で了承 (NHK2023年3月3日)
 
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北陸電力志賀原発の敷地断層「活断層でない」規制委審査で了承

 石川県にある志賀原子力発電所の敷地内を通る断層について、「活断層ではない」とする北陸電力の主張が、原子力規制委員会の審査会合でおおむね了承されました。
 7年前、規制委員会の専門家会合が示した「将来動く可能性を否定できない」などとする見解を転換することになり、北陸電力が再稼働を目指す2号機の審査が進展することになります。
 志賀原発には1号機と2号機があり、7年前、原子力規制委員会の専門家会合が敷地内の断層の一部について、「将来動く可能性を否定できない」などとする見解をまとめました。断層の真上にある1号機は廃炉に、2号機も大幅な改修が必要になる可能性がありました。
 これに対し北陸電力は、地層に含まれる鉱物の状態から断層が動いた年代を把握する「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法を用いた評価を提示。
 600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層による変形が見られないことなどから、敷地内の断層の活動性を否定できると主張してきました。
 原子力規制委員会の石渡明委員は、3日の審査会合で「新たに出された膨大なデータに基づいて評価し直したところ、将来活動する可能性のある断層ではないと判断できる、非常に説得力のある証拠が得られた」と述べました。
 そのうえで、審査会合では「おおむね妥当な検討がなされているものと評価する」として、「活断層ではない」という北陸電力の主張が了承されました。
 7年前の見解を転換することになり、2号機は審査が進展することになりますが、地震の揺れや津波といった自然災害の想定や、その対策など、多くの項目が残されています。

 志賀原発の断層めぐる議論の経緯

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        志賀原発2号機をめぐる動き
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 2011年3月   定期検査と東日本大震災で運転停止
 2014年     北陸電力が原子力規制委員会に適合性審査を申請
 2016年     敷地内の断層の一部が「活断層」の可能性
         北陸電力 データの追加提出
 2021年、2022年 原子力規制委の現地調査
 2023年3月3日 「活断層ではない」と了承
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 志賀原発2号機は、17年前の2006年に営業運転を開始しました。
 2011年に定期検査に入った直後、東日本大震災が発生し、以降は停止しています。
 福島での事故を教訓に新たに策定された規制基準に基づき、北陸電力が原子力規制委員会に適合性の審査を申請したのは2014年でした。
 その後、志賀原発の敷地内を通る断層が、将来動く可能性のある「活断層」かどうか、原子力規制委員会の専門家による会合や2号機の再稼働を目指す審査で議論されてきました。
 「活断層」かについては、規制委員会の専門家会合で議論され、2016年に評価書が取りまとめられました。
 このときは、▽1号機の真下を通る断層「S-1」と、▽1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管の真下を通る断層について、評価しました。
 ▽「Sー1」断層については、1号機の建設前に原子炉建屋のすぐ脇を掘って地層を調べるトレンチ調査のスケッチに記された地下の岩盤の亀裂と段差をもとに「将来動く可能性は否定できない」と指摘しました。
 また、
 ▽冷却用配管の真下を通る断層についても、トレンチ調査による地層の状況などをもとに「将来、地盤を変形させる可能性がある」という見解を示しました。
 新しい原発の規制基準では、将来動く可能性のある断層の上に重要な設備の設置を認めておらず、結論が覆らないかぎり、1号機は再稼働できず廃炉に、1号機と2号機の原子炉につながる冷却用配管は移設や補強などの対応が必要になる可能性が出ました。
 一方で、こうした評価は建設当時の断層のスケッチなど限られたデータに基づいていて、より正確な評価をするにはさらに詳しい分析やデータが必要だとも指摘していました。
 これに対し北陸電力は、2号機の再稼働に向けて2014年に申請した審査の中で、これらの断層を含む敷地内の断層は、いずれも「将来動く可能性はない」と主張し、その根拠として「鉱物脈法」と呼ばれる新たな手法による評価を提示しました。
 原発の新しい規制基準では、12万年前から13万年前の「後期更新世」の時代よりもあとに動いたとみられる断層を「活断層」と定義していて、地層の状態から活動性の有無やずれ動いた年代を調べる手法が用いられます。
 一方で、志賀原発の場合、地層の変化が分かる資料が少ないことなどから、地層に含まれる鉱物が地下の熱などの影響で変質した時期を調べることで断層の年代を把握する手法を採用しました。
 審査の対象となった敷地内断層は10本あり、1本でも活断層だとされた場合、再稼働は認められないとされていました。
 北陸電力は、ボーリング調査で採取した試料などを分析した結果、600万年前より昔に生じたと推定される鉱物に断層によるずれや変形が見られないことなどから、いずれの断層も活動性を否定できると主張しました。
 これを受けて規制委員会は、現地調査をしました。断層周辺の地層の変化や、断層に含まれる鉱物の分析結果などを観察し、北陸電力の主張が妥当かどうか検討していました。

 志賀原発の敷地内の断層と「鉱物脈法」

 志賀原子力発電所の敷地内には、原子炉建屋の真下を含めて複数の断層があります。
 原子力規制委員会は、このうち10本を対象に「活断層」かどうかの見極めを続け、1本でも「活断層」なら再稼働はできないという認識を示していました。
 これに対し北陸電力は、「活断層」ではない根拠として、「鉱物脈法」を使って得られたデータを示しました。
  [図]

 「鉱物脈法」は、断層を横断して分布する鉱物を調べる手法で、これらにずれや変形が見られないとして、断層の活動性を否定しました。

 北陸電力「大きな一歩」

 「活断層ではない」とする主張がおおむね了承されたことについて、北陸電力は「この審査結果は地元の皆さまの安心につながるものであり、再稼働に向けた審査のステップとして大きな一歩と受け止めている。今後も敷地周辺の断層や地震動、津波などの審査が継続されるが、今後の審査においても適切に対応し、地元の皆さまの了解を大前提に、1日も早い再稼働を目指していく」とコメントしています。

 石川県 馳知事「丁寧、厳正かつ迅速な審査を行ってほしい」

 石川県の馳知事は「一段落がついたと受け止めている。再稼働に向け今後もまざまな審査が続くが、原子力規制委員会には丁寧、厳正かつ迅速な審査を行ってほしい」と述べました。
 一方、記者から「一刻も早い再稼働を求めるのか」と質問されたのに対し、馳知事は「一刻も早くということではない。丁寧であることと迅速であることは同じくらい重視している」と述べました。

 原告団「審査方法は妥当だったのだろうか」

 一方、志賀原発の再稼働の差し止めを求めて訴えを起こしている原告団は「審査は十分尽くされたといえるのだろうか。審査方法は妥当だったのだろうか」としたうえで、「志賀原発が活断層に囲まれた原発であることが次々と明らかになる中、敷地内断層に限っては『活動性なし』と断言できるのか、周辺断層からの影響はないのか、よりいっそう慎重な審査と判断が求められるはずだ」などとしています。
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