[2023_02_22_13]新潟県 東京電力・柏崎刈羽原発再稼働めぐる議論 進むのか ”3つの検証”総括する検証総括委員会 池内了委員長に聞く(NHK2023年2月22日)
 
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新潟県 東京電力・柏崎刈羽原発再稼働めぐる議論 進むのか ”3つの検証”総括する検証総括委員会 池内了委員長に聞く

 新潟県の花角知事が東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の議論の前提とする県独自の「3つの検証」。2023年3月までにすべての報告書がそろう見通しとなり、最終盤を迎えています。
 一方、政府は脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給のため、安全を最優先に原発を最大限活用する方針を打ち出し、柏崎刈羽原発6号機と7号機については今夏以降の再稼働を目指すとしています。原発の再稼働をめぐる県の議論は進んでいくことになるのでしょうか。
 鍵を握るのは3つの検証のとりまとめを担う検証総括委員会。その行方に注目が集まっています。
(新潟放送局 記者 阿部智己)

 「3つの検証」 最終盤へ

 「3つの検証」は米山前知事が始めたものです。東京電力・福島第一原発事故の原因を検証する技術委員会、避難をめぐる課題を検証する避難委員会、健康と生活への影響を検証する健康・生活委員会からなり、健康と生活への影響は生活分科会と健康分科会の2つの分科会で検証が行われてきました。
 これまでに技術委員会、避難委員会、生活分科会の3つの報告書がまとめられ、健康分科会も2023年1月の会合で大筋でまとまり、2023年3月までに知事に報告書が提出される見込みとなりました。米山前知事が始め、花角知事に引き継がれた「3つの検証」は1つの区切りを迎えることになります。ただ、これで議論が進むかとなるとそう簡単ではなさそうです。

 ”休眠状態”の検証総括委員会 県と委員長の大きな隔たり

 大きなポイントとなるのは検証総括委員会です。検証総括委員会は「3つの検証」のとりまとめを担いますが、おととし1月以来開かれていません。実に2年もの間「休眠状態」となっているのです。なぜなのか。新潟県と委員会のトップ、この両者の間に検証の内容や進め方をめぐる大きな隔たりがあるからです。

 隔たり@柏崎刈羽原発の安全性の議論

 特に大きな隔たりは「柏崎刈羽原発の安全性」をどこでどのように議論すべきかという点です。
 委員長を務める名古屋大学名誉教授の池内了さんは柏崎刈羽原発を安全に稼働できるかどうかを検証するのは重要なポイントだとして検証総括委員会で議論すべきだとしています。
 一方、県は「検証総括委員会は福島第一原発事故に関する3つの検証の『総括』が仕事であり、原発の安全性の議論は含まれない」としています。ただ、県としても柏崎刈羽原発の安全性の確認は必要だとして「各分野の専門家の最新の知見に基づき、県の技術委員会が客観的かつ科学的に議論している」と説明しています。技術委員会には原子炉物理やヒューマンエラーなどの専門家がおり、原発の安全性という専門的な議論をするのにふさわしい場だというのです。

 隔たりAタウンミーティング

 また、池内委員長は県民の意見を聞きながら検証を行うためタウンミーティングを開催したいとしています。
 一方、県は「検証総括委員会で検証結果がとりまとめられたあと、結果について県が広く情報共有したいと考えている」としています。
 検証の内容や進め方などをめぐって委員長との間に隔たりがあることについて、花角知事は2023年2月1日の定例会見で次のように述べました。
 運営のしかたが違う、認識が違うというよりも、例えて言えば、土俵をここでとお願いしているのに委員長は土俵を別に広げようとしている。「そこは県がお願いした土俵ではありません」というところをぜひ認識してもらって、とりまとめを進めていただきたい。お願いとは別のことをやりましょうというのは違いますよね。
 県からすれば、“池内委員長は県がお願いしている委員長の役割を超えて取り組もうとしているため、繰り返し、お願いしている役割を果たしてもらいたい”と説明しているというのです。一方の池内委員長はこうした状況をどう考えているのでしょうか。

 池内委員長の考えは

 検証総括委員会の委員長を務める池内了さんは県の求めているやり方では県民のための検証を行えないと主張しています。
 県民のための検証、総括をするんだから、県民が本当に知りたがっていることを深掘りしないとだめだろうと。県はこれまで出てきた報告書を手際よく整理してうまくまとめてくださいとおっしゃってるんですけど、そこにむしろ書かれていないこととか、より深掘りして議論すべきことなんかをもっと総括であぶり出す必要があるのではないかと。
 そのために柏崎刈羽原発の安全性の議論が欠かせないといいます。
 検証委員会の最大の目標は新潟県に存在する柏崎刈羽原発の安全性に関して大丈夫かということに、いろいろな観点から特に福島の原発事故の反省に基づいて点検する。そういうことが目標なんじゃないかと思う。それを語らないと本当の検証にはならない。柏崎刈羽原発の安全性に対する議論抜きの検証総括はあり得ないのではないかと私は思っています。
 また、県民の意見を議論に反映させるためにタウンミーティングも必要だと主張しています。
 柏崎刈羽原発に関してどういうことを聞きたいか、知りたいかということ、その意見を書いてもらい、それを総括委員会で見て、この意見はちゃんと議論したほうがいいなと思うことについてはオンラインでも直接来ていただいてもいいので話をしていただいて、それを受け取って委員会として議論するといいのではないか。

 県と池内委員長との間では話し合いも

 池内委員長によりますとこの2年間、新潟県との間でたびたび話し合いの場が持たれたということです。
 2021年8月に副知事と危機管理監と防災局長の3人に呼び出された。彼らは打ち合わせ会と言ったけど、要するに県の意見どおりに進めるということに納得してほしいというふうに言われた。私は「それはできません」と。私のやり方のほうがより県民の意向に沿っているはずなので。

 きちんとした総括を

 「3つの検証」という枠組みが作られてから約6年。福島第一原発事故の原因に関する技術的な問題から、避難の課題、事故がもたらした健康や生活への影響まで幅広い検証が行われてきました。県としてはまずは、出そろった検証結果に矛盾などが無いか確認して取りまとめてほしいとしていますが、池内委員長はこれをより深掘りしたい考えです。
 池内委員長の任期は2023年3月末までと間近に迫っています。どのような形で総括が行われるにせよ、これまで時間をかけて積み重ねてきた検証が生かされ、県民が納得できるきちんとした総括を行ってほしいところです。
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