[2023_02_09_05]【解説】トルコ大地震 「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か 耐震基準“日本並み”も補強追いつかず…(日テレ2023年2月9日)
 
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【解説】トルコ大地震 「パンケーキクラッシュ」で被害拡大か 耐震基準“日本並み”も補強追いつかず…

 トルコ南部を震源とする地震は発生から丸3日が経ちましたが、今も犠牲者の数は増え続けています。ここまで被害が拡大し、救出作業が困難に陥っているのはなぜなのでしょうか。

 ●「パンケーキクラッシュ」
 ●耐震追いつかず
 ●救助・支援が難航
 以上のポイントを中心に詳しく解説します。

 ■トルコ・シリアで死者1万5000人以上 “発生72時間”過ぎ…

 現地では真冬の寒さの中、懸命な救助活動が続けられています。8日、トルコ南部のハタイでは、がれきの中から赤ちゃんが救助されました。地震から約68時間が経っていましたが、赤ちゃんの健康状態に問題はないということです。シリア北部のジンディレスでは、幼い女の子が救出されました。
 ロイター通信によると、これまでに亡くなった人はトルコと隣国シリアで合わせて1万5000人以上にのぼっています。世界で起きた自然災害で死者が1万人を超えるのは、2011年の東日本大震災以来のことです。
 そして、日本時間9日午前10時すぎ、最初の地震の発生から72時間が経過しました。生存率の急激な低下が懸念されています。

 ■揺れの影響…非常に広範囲 被害は“関東・中部・近畿合わせた広さ”

 今回、ここまで被害が拡大している背景の1つには、揺れの影響を受けた範囲が非常に広いということがあります。
 ロイター通信はトルコ当局の話として、被害の範囲は南北で300キロ、東西で450キロに広がり、約1350万人が被災したと伝えています。
 この範囲は、面積にすると13万5000平方キロメートルになります。これを日本に当てはめてみると、関東、中部、近畿地方を合わせた広さになるということです。

 ■非常に危険度の高い壊れ方「パンケーキクラッシュ」 柱の弱い建物が街中に多く残っていると…

 また、被害拡大のもう1つの要因と考えられるのが「パンケーキクラッシュ」と呼ばれる現象です。東京大学地震研究所の楠浩一教授によると、パンケーキクラッシュは非常に危険度の高い建物の壊れ方だということです。
 取材に基づくシミュレーションでは、地震の激しい揺れで、地面に近い1階の柱が強度を失い、コンクリートがはじけ飛ぶように壊れました。その衝撃を受けた上の階の床が折り重なるようにほぼ垂直に崩れ落ち、ものの数秒で床だけが折り重なったパンケーキのような状態になりました。
 トルコだけではなく、他の地域でも大きな地震があるとたまに見られるといいます。日本でも、東日本大震災や熊本地震の際にパンケーキクラッシュは起きていました。ただ、それ程多くはなかったといいます。
 パンケーキクラッシュが起きる最大の原因は、柱が弱いことです。柱の中の鉄筋の量が少なかったり、支えるものに対して柱が細すぎたりする場合などに起きやすいといいます。
 実際にトルコでは、パンケーキクラッシュといえる現象が数多く確認されました。柱の弱い建物が街中に多く残り、被害が拡大した可能性が考えられるとされています。

 ■1999年の大地震で耐震基準“日本並み”に ただそれ以前に建てられた建物も多く…

 トルコは日本と同じく地震が多い国で、法律上はかなり厳しい耐震基準が採用されています。しかし、建物がその基準に追いついていないのが実情です。
 トルコ政府は1999年に起きた大規模な地震をきっかけに、耐震基準を大きく見直し、現在は日本と変わらない水準となっています。ただ、問題なのはこの基準ができるより前に建てられた建物が、まだまだ多く残っているということです。

 そのような建物には耐震補強をすることになっています。日本でも例えば、全国の学校の校舎はほぼ100%まで耐震補強の工事が完了していますが、これには約25年がかかりました。

 ■私たちにできることは… 必要なのは「お金」?

 現地トルコの被災者は、非常に過酷な避難生活を強いられています。国連の担当者は「より多くの食料と医薬品が必要だ。これまで貯蓄していた燃料も、すぐに底をついてしまうだろう」と各国に支援の強化を呼びかけています。
 では、私たちに何ができるのでしょうか。
 ユニセフによると、今回は食料などに加えて、現地が非常に寒いので冬服が必要だとしています。ただ、今の時点での緊急支援としては、物資そのものを届けるよりもお金での支援がいいそうです。専門家が現地に入って必要な物を把握し、それに合わせて物を購入して届けられるというのが理想だといいます。
 お金での支援については、ユニセフや国境なき医師団などが寄付を受け付けているほか、イオンやセブン&アイ・ホールディングスのグループ店舗などでも募金箱を設置しています。また、一部ではありますが、買い物でためたポイントが寄付可能なところもあります。こうした方法で寄付を検討してみてもいいかもしれません。

    ◇

 日本と同様に地震大国であるトルコは、日本の最新の知見や耐震技術を積極的に取り入れているといいます。ただそれでも、耐震が先か、地震が先か、まさに時間との闘いで、地震国共通の課題が改めて浮き彫りとなっています。
 (2023年2月9日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)
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