[2023_02_07_04]トルコ・シリア地震、エネルギー蓄積や不十分な耐震化で被害拡大 専門家(AFP時事2023年2月7日)
 
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トルコ・シリア地震、エネルギー蓄積や不十分な耐震化で被害拡大 専門家

 【AFP=時事】トルコ南部で6日発生したマグニチュード(M)7.8の地震で死者数が拡大したのは、未明という発生時間帯や場所、断層の活動が比較的静かだったこと、脆弱(ぜいじゃく)な建物といった複数の要因が重なったためだったと専門家は分析している。
 まず指摘できるのは、トルコで1939年以降、最大規模の地震だったという点だ。さらに、約200万人が住む南部の都市ガジアンテプ(Gaziantep)など人口が比較的多い地域を地震が襲ったことも、被害が広がる要因になった。
 地震が起きたのは午前4時17分だった。睡眠中の人々が「倒壊した建物の下敷きになった」ケースが多かったと、英地質調査所(BGS)のロジャー・ミュッソン名誉研究員は指摘する。
 ミュッソン氏は「(建物の強度も)大きな地震が起きる可能性がある地域にしては極めて不十分だった」と分析。これには、地震が発生した断層が近年、比較的静かだったことも影響したという。
 トルコは、世界で最も地震の活発な地域の一つで、1999年には北アナトリア(North Anatolia)断層で起きた地震で1万7000人以上が死亡している。今回の地震は、トルコ南東部に延びる東アナトリア(East Anatolia)断層に沿って発生した。
 ミュッソン氏は、東アナトリア断層ではM7を超えるような地震は200年以上起きていなかったため、人々は「危険性を軽視していた」とし、地震への不十分な備えも犠牲者拡大の要因になったと話す。さらに、長期にわたって大地震が起きていなかったことから、「巨大なエネルギーが蓄積されていた」可能性もあるという。

 ■1822年の「再来」

 今回の地震は、1822年に同じ地域で起きたM7.4の地震が「再来したようなものだ」とミュッソン氏は解説する。同年の地震では、複数の町が壊滅状態となり、数万人が犠牲になるなど甚大な被害を出した。余震は、翌年6月まで続いたという。
 今回の地震の震源はガジアンテプ付近で、深さは17.9キロと比較的浅かった。同氏によると、地震は「アラビアプレート」が北に動いたことで発生。断層がスムーズに動かなかったため、蓄積されたエネルギーが放出されて大地震が引き起こされたと分析する。
 ミュッソン氏は、重要なのは震源ではなく、どの程度の範囲で断層が動いたかだとし、今回は約100キロにわたって断層がずれ動いたと話す。
 同氏は「つまり断層に沿った100キロ圏内のすべての場所が、震源の真上に位置した形になる」との見方を示した。

 ■地震に脆弱な建物

 英ポーツマス大学(University of Portsmouth)の火山学者カルメン・ソラナ氏は、地震の発生は予測できず、今回地震が襲った地域では耐震設計に基づいた建物だったかどうかが極めて重要だったと指摘する。
 ソラナ氏は「耐震建物はトルコ南部や特にシリアでは数が少なく、(救助隊の活動に)人命救助を依存せざるを得ない」という。
 トルコ政府は1999年の地震を受けて、すべての新築の建物に最新の耐震基準を満たすよう義務化する法案を2004年に可決した。
 レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は、114人が死亡したエーゲ海(Aegean Sea)沿岸での2020年の地震を受け、耐震建物の推進を政治的な優先課題とした。
 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のリスク防災研究所のジョアンナ・ウォーカー所長は、2004年の法律が順守されているか調査する必要があるとトルコ政府に呼び掛けている。
 さらに、ウォーカー所長は、「古い建物の安全性を改善できる可能性があるかどうか」も見直す必要があると訴えている。
 一方、シリアでは10年以上に及ぶ戦争で多くの建物が脆弱な状態になっていたとの指摘もある。【翻訳編集】 AFPBB News
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