[2023_02_03_03]除染などの事業関連 半数近くが「1者応札」 会計検査院調査(NHK2023年2月3日)
 
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除染などの事業関連 半数近くが「1者応札」 会計検査院調査

 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う除染などの事業をめぐり、国が行った700件あまりの入札について会計検査院が調べたところ、1つの事業者だけが参加する「1者応札」が半数近くを占めていたことが分かりました。複数が参加したケースに比べて落札価格が高くなる傾向も出ていて、検査院は競争性を確保するように求めています。
 会計検査院は3日、福島第一原発の事故に伴う除染や廃棄物の処理といった国の事業についての検査結果を国会に提出しました。
 環境省福島地方環境事務所がおととし9月までの5年半の間に事業者と結んだ984件、総額1兆7000億円余りの契約を調べたところ、このうち一般競争入札は735件で、その49.3%にあたる362件が、1つの事業者だけが参加する「1者応札」でした。
 この「1者応札」の割合は、国が行った一般競争入札全体の平均に比べても15ポイント余り高い数字です。
 「1者応札」で成立した契約の予定価格に対する落札価格の割合、いわゆる落札率を調べたところ、平均は94.6%で、複数の業者が参加したケースと比べて13.3ポイント高くなっていました。
 会計検査院は、入札における競争性を確保するように求めています。
 こうした結果について公共入札の仕組みに詳しい上智大学法学部の楠茂樹教授は「もともと1者しか参入できないような構造があると疑われる。業者があらかじめ『自分が落札できる』と考えると入札価格を下げようとは思わないので、どうしても高値になりやすい。原因究明が最も大事で、それによって対策も変わってくる」と指摘しています。
 環境省は、事業者に対して独自に行ったアンケート結果などから、特定の事業者が継続して受注しているため他の事業者の参入が難しくなっていると分析していて、今回の指摘に対しては「さらに原因を分析した上で対策を進める」としています。
 「1者応札」が続く背景について、除染事業などに携わってきた大手ゼネコンの下請け企業の関係者は、「どの企業も、本格発注に先立って発注されたモデル事業などで自分たちが手がけた仕事をそのまま継続して受注したいと考えるが、そのためには、事業を通じた『地域への関わりの濃さ』が大事になる。このため、大手ゼネコンやそれらを中心としたJV・共同企業体による、自治体ごと、地域ごとのすみ分けができあがっている」と話しました。
 さらに、「人材や資機材には限りがあるので、どの会社も一番得意な分野で協力会社も集められる工事を研究し、ライバルの有無も含めて情報収集しながら入札している。工事の中身を見ながら互いにあうんの呼吸で応札していくし、周りの業者も『あの地域の事業は長年特定の企業が受注してるから、自分の会社はそこではなく別のところに行こう』と判断をすることもある」と述べました。
 そのうえで、「廃炉作業や被災地のインフラ整備、地域の開発はこれから本格化していくので、大手ゼネコンは受注の足場を築くためさらに囲い込みを進めるとみられ、これからますます1者応札が増えるだろう」と語りました。
 また、契約変更が相次ぐ理由については、「環境省など事業を発注する機関が設計や積算を行うが、その際に地域の情報や地形、地権者の声などを十分反映しないまま、他の地域で行っている通常の建設工事のデータを当てはめて同じように設計してしまっていることが、大きく影響している」と話しました。
 そのうえで、「発注内容の詰めが甘く、いざ現場に入ったら全く条件が違っていたり、地権者から反対されたりするなど、時間もお金も余計にかかるとなれば、当然、『面倒を見てほしい』となる。発注側も、別の事業として発注することになればその分経費がかさむので、発注済みの工事の中に緊急的に入れ込むことがよく行われている」と述べました。
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