[2022_10_27_11]三菱電機不正 悪弊根絶への覚悟が問われる(読売新聞2022年10月27日)
 
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三菱電機不正 悪弊根絶への覚悟が問われる

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 三菱電機の品質不正問題は、あまりにも根が深い。再発防止を徹底するには、企業風土を根本から改め、一から出直す経営陣の覚悟が必要だ。
 三菱電機は、品質の検査などを巡る不正について、弁護士らによる外部調査委員会の最終報告書を発表した。5月に前回調査を公表した後、新たに11拠点で70件の不正が判明したという。
 昨年6月に長崎製作所で鉄道向け空調設備での不正検査が発覚して以降、調査を行ってきた。今回が4回目の報告書となる。
 全国22製作所のうち8割近い17製作所で、累計197件の不正が見つかったことになる。日本を代表する電機メーカーで、これほど大規模に不正が常態化していたことは極めて異常な事態である。
 最終報告書は「品質に実質的な問題がなければよい」との誤った認識が不正を生んだと指摘した。意図的なものは112件、管理職が関与した例も62件あった。
 さらに、外部の調査が始まった後も不正行為が続いていたケースがあったことは憂慮すべきだ。
 兵庫県の姫路製作所では、自動車部品についての認証機関の監査で、数値の書き換えなどが今年8月まで行われていた。
 兵庫県の赤穂工場では、変圧器の試験でのデータ改ざんが今年春まで継続していた。2018年〜22年にかけては、従業員らが上司にたびたび不正をやめたいと伝えていたが、管理職は是正策を講じなかったという。
 漆間啓社長は記者会見で、「経営者としての本気度が足りなかった」と述べた。昨年7月の社長就任後も事態を見過ごしていた責任を重く受け止めてもらいたい。
 また、社長、会長を歴任し、昨年辞任した柵山正樹氏は、発電機を製造する工場の課長だった1992年頃、性能試験で実際の測定値ではない値を顧客に報告する行為を自ら主導していた。不正の根深さを物語るものだ。
 今回で外部調査は終えるというが、 膿 を出し切れたと言えるのか。悪弊を根絶せねばならない。
 このほか三菱電機では、過労やパワハラによる社員の自殺なども相次いだ。品質不正の要因にも挙げられている上意下達の閉鎖的な風土の変革など、現経営陣の強い実行力が問われる。
 国内の製造業では品質を巡る不正が後を絶たない。最近では、トラック大手の日野自動車でも発覚した。他企業も経営陣と製造現場が意思疎通を密にし、問題を洗い出す努力を続けてほしい。
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