[2022_12_22_04]「国民不在」の原発推進 政策大転換、スピード決定の“大義名分”(毎日新聞2022年12月22日)
 
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「国民不在」の原発推進 政策大転換、スピード決定の“大義名分”

 政府は22日、既存原発から次世代原発へのリプレース(建て替え)を推進する基本方針をまとめた。福島第1原発事故後、新増設・リプレースは「想定していない」と説明してきた原子力政策の大転換となる。岸田文雄首相が8月に原発推進の検討を指示してから4カ月足らずのスピード決定までに何があったのか。次世代原発は本当に実用化できるのか。

 ウクライナ侵攻、電力不安…推進へかじ

 「東日本大震災以来、原子力の世界は失われた10年ではなかったか。確とした原子力政策を示していただきたい」。経済産業省が11月28日に次世代原発の推進案を提示する2日前。福井県の桜本宏副知事は、福井市で開かれた原発関連のイベントでこう述べた。
 若狭湾沿いに原発が集中立地する福井県は、原子力産業と地域経済が密接に関わる。なかでも関西電力美浜原発(同県美浜町)は過去に1号機のリプレース計画が浮上した経緯があり、次世代原発のリプレース第1号の有力候補とされる。
 長期的な原子力政策が明確にならなければ、地域経済の将来像が描けない。美浜町議会は10月、新増設を含めた「原子力政策の確固たる方針を明確に示す」ことを求める意見書を賛成多数で可決し、政府に判断を迫った。経産省も「原子力政策には、福井など立地自治体の思いが非常に重要」(幹部)と説明する。
 しかし、福島原発事故を経験した国民の原発不信は根強い。「原子力政策の明確化」で原発推進を打ち出せば、国民批判を受けかねず、長期政権を築いた安倍政権も手をつけなかった。
 そこで岸田政権は、原発を従来のようにエネルギー政策としてだけではなく、脱炭素化政策の一環と強調する。2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、原発を「可能な限り低減する」との表記を踏襲する一方、50年の脱炭素社会の実現に向けて「必要な規模を持続的に活用する」と付け加えた。
 その後、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、エネルギー安定供給が不安定化すると、政府・与党内で「今こそリプレース推進に踏み込むべきだ」(経産省幹部)との主張が台頭。ほぼ全量を輸入する原油や天然ガスに頼らないエネルギー源である原発には「エネルギー安全保障」という大義名分が加わった。
 原発推進の姿勢を鮮明にした舞台は…(後略)
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