[2022_12_04_01]敵基地攻撃能力、原発依存に舵…重要政策の変更急ぐ岸田政権 国民に説明なく年内決着狙う(東京新聞2022年12月4日)
 
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敵基地攻撃能力、原発依存に舵…重要政策の変更急ぐ岸田政権 国民に説明なく年内決着狙う

 岸田政権は、国の基本方針にかかわる複数の政策転換を年内に決着させようとしている。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や、原発の建て替え(リプレース)推進などだ。いずれも国民に丁寧に説明し、十分に理解を得て進めるべきものだが、期限を設けて結論を急いでいる。重大案件を同時に進める手法に識者からは疑問の声が上がる。(山口哲人)
 与党は2日、敵基地攻撃能力を保有することで合意した。日本は戦後、相手国領域への攻撃はしない専守防衛の方針を堅持してきたが、転換へと舵(かじ)を切り、憲法に基づく平和主義は大きく揺らぐ。与党合意を受け、政府は年内に改定する外交・防衛政策の指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書に盛り込むが、国会は関与していない。
 防衛費も5年以内に国内総生産(GDP)比2%に増額させる方針だ。防衛費は1976年に国民総生産(GNP)比1%を上限とする方針が掲げられ、憲法に基づく抑制的な防衛政策を予算面で対外的に訴えるものとして、歴代政権は1%を目安に当初予算を編成してきたが、そうした目安が取り除かれる。
 2011年の東京電力福島第一原発事故を契機に、日本は原発への依存度低減を目指してきたが、岸田文雄首相は8月、原発政策の見直しの検討を指示した。
 経済産業省が先月まとめた計画案では、「原則40年、最長60年」と制限された原発の運転期間に関し、再稼働に向けた審査などで停止した期間を除き、60年超の老朽原発の延命に道を開く。廃炉が決まった原発を対象に次世代型原発での建て替えも進める。計画案策定の過程で、国民から意見は募らなかった。
 計画案は年内にGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議の決定を経て、政府方針となる。昨年10月に閣議決定したエネルギー基本計画に明記した「可能な限り原発依存度を低減する」との方針は骨抜きとなる。
 医療や介護の分野でも、一定の所得がある高齢者の保険料や利用者負担を引き上げる方向で検討を進め、年内の決着を目指す。
 細川護熙内閣で首相秘書官を務めた駿河台大の成田憲彦名誉教授(政治学)は「以前は『一内閣一仕事』と言われ一つの大きな課題に取り組んだが、岸田首相は原発のリプレースや『防衛費2%』を突然言い出した。国家的なテーマを同時に進めるのは、支持率低下に焦って実績作りを急いでいるのだろう」と話す。

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