[2022_11_22_09]「本当に屋内退避はできるのか」複合災害で不可能なケースも… 原発避難検証委員の指摘 (新潟放送2022年11月22日)
 
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「本当に屋内退避はできるのか」複合災害で不可能なケースも… 原発避難検証委員の指摘

 東京電力柏崎刈羽原発を巡っては新潟県独自の3つの検証の一つ、『事故が起きた際の避難』について検証委員会がおよそ5年をかけて議論し、456の論点を取りまとめました。避難検証委員会の委員から話を聞き、残された課題などをシリーズでお伝えします。
 今回話を聞いたのは、危機管理を専門とする民間企業『総合防災ソリューション』の危機管理業務部長・澤野一雄委員です。

 【澤野一雄委員】
 「柏崎刈羽原子力発電所、かなり出力の大きい原発でありますので、もし過酷事故が起こった場合、住民をいかに安全に避難していただくかということでかなり腐心していると思います。今回足掛け6年にわたって、いろんな課題についていろんな先生と議論したんですけれども、率直に言って結構いい問題点とか把握できたんじゃないかと。幅広くできたんじゃないかと思っています。いろんな先生がいろんな意見を持たれて忌憚のない意見を言った委員会だと思っています。これは私は非常にいいのかなと感じています。」
 澤野委員が挙げる課題、それは『屋内退避』についてです。現状の避難計画では原発で事故が起きたときに原発から半径5キロ圏内のPAZにいる人はすぐに避難することになっていますが、5キロから30キロ圏内=UPZは道路渋滞などを避けるために屋内に退避することになっています。澤野委員はこの屋内退避が本当にできるのかが疑問だとしています。

 【澤野一雄委員】
 「基本的には屋内退避における行動。特に複合災害において本当に屋内退避ができるのか。屋内退避における生活支援、例えばものだとか水だとか、そういうのをどのくらい配れるのか。当然、屋内退避が1日2日と短い期間になればそれはそれほど大きな問題になるとは思えないが、ある程度長くなるとそういう生活支援というものをどうしていくか。そして誰がそれを運んでいくのかというのが問題なのかと思っています。」
 また、検証委員会では地震と原発事故との複合災害の場合、ある程度の震度以上の地震直後の屋内退避は「被害が大きい地域については現実的に不可能であり推奨されるものではない」としています。
 避難している建物が余震によって崩れてしまうリスクもあるためです。

 【澤野一雄委員】
 「複合災害になって自宅が使えない、だからみなさん避難所に行かざるをえない。じゃあ、本当に避難所に行ったときに全部目張りしてですね、屋内退避ができるのかというのは確かに問題だと思います。どうしたらいいのか。最初から避難させるのかということは皆さんに考えてもらわないと。屋内退避するのか、あるいはもともと屋内退避できないような状況であればその人も30キロ圏外に避難させるのかというのは問題になろうか思います。」
 委員会で議論を進めてきた『実効性ある避難計画』。澤野委員はこの避難計画を柔軟に運用するとともに繰り返し訓練を行い修正していく必要があると考えています。

 【澤野一雄委員】
 「この計画を基準にして実行段階でしっかり対応していくということが本当に大事だと思っているんですよ。計画をこの通りやらなければいけない、例えば法律的に考えると、いや基準があるからこの通りに動くんだ、ということでかえって放射線量を増やすようだったら本末転倒だし、あくまで計画というのは『準拠』だというものであるというふうに私は考えています。『じゃあ、こんなの準拠だから計画いらないじゃないか』と言う方もおられるんですが、計画がないと行動の基準がないものですから何をしていいか分からない。これを基準としてその前提に照らし合わせて柔軟に運用していく、それがこの計画を実効性あるものにするのではないかと思います」
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