[2022_11_21_03]ウクライナの原発が次々に外部電源を喪失 運転中の原子炉が複数停止 外部電源喪失は東電福島第一原発と同じ 原発の大規模破壊を防ぐには戦闘の停止しかない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年11月21日)
 
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ウクライナの原発が次々に外部電源を喪失 運転中の原子炉が複数停止 外部電源喪失は東電福島第一原発と同じ 原発の大規模破壊を防ぐには戦闘の停止しかない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ ウクライナ戦争が続く中、ザポリージャ原発だけでなく他の原発も危険が高まっていることが、IAEAの速報で明らかになった。
 11月16日、IAEAによるとウクライナで複数の原発が外部電源を喪失し、非常用ディーゼル発電機に頼っていたことが明らかになった。
◎ 11月15日18時35分(現地時間)、ミサイル攻撃の影響でフメリニツキー原発(VVER1000/95万キロワット2基)の外部送電系統が4本全て遮断された。
 2時間半にわたって徐々に失われ、最終的に全てが完全に喪失した。
 原発では原子炉2基が稼働中だったが緊急停止された。そのため電力供給も遮断され、広い地域が停電した。
 9時間以上経過した翌3時45分に、2系統の330キロボルト予備電力線が送電を開始し外部電力が復旧したことでディーゼル発電機は停止したが、そのうちの1系統は約1時間後に再び失われ、11時25分になってようやく復旧した。2基の原子炉は停止したままという。

◎ 同じくウクライナ西部のリウネ原発(VVER440/38万キロワット2基、VVER1000/95万キロワット2基)は、750キロボルト送電線の一系統が遮断された。
 その結果、発電所の出力が低下し4基のうち1基が自動的停止した。

◎ ウクライナ最大の原子力発電所であるザポリージャは、ウクライナ戦闘中に何度も外部電源を喪失している。これらの出来事は他の原子力施設も脆弱であることを浮き彫りにした。ウクライナには4つの原発に15基の原子炉がある。

◎ 戦争では社会インフラは戦術目標として狙われる。
 いま、ウクライナでは選択的に火力・水力発電所と送電設備に攻撃が集中しており、全土で大規模な停電が断続的に発生している。
 冬を前に暖房がない事態を想起させ、戦意を喪失させる目的である。

◎ ウクライナの場合、チェルノブイリ原発事故で明らかなとおり、原発の大規模破壊が発生したらウクライナに留まらず風向風速と天候次第ではむしろベラルーシやロシアが大きな被害を被る可能性がある。従って、ロシアも原発を直接攻撃することは避けていると思われる。

◎ ウクライナの位置では、トルコから中東方面、あるいは南ヨーロッパも大規模な汚染に見舞われる。チェルノブイリ原発事故では旧ソ連圏だけでなくドイツや北イタリアまでも高線量の汚染が確認されている。
 ロシアは、原発を破壊しないようにして、送電システムを攻撃している。
 しかし原発の冷却には電力が必須なのは福島第一原発事故で常識だ。
 ヨーロッパ第二の原発大国ウクライナで、電力網を破壊するということは、原発のメルトダウンを準備しているようなものだ。
 この危機を回避するには、戦闘の停止しかない。

◎ 本年2月26日の、たんぽぽ舎第34回総会の決議で
 「ロシア軍はこれらも制圧する可能性がある。さらに、変電所、送電網が破壊されれば、原発が不安定になり、全原発で不測の事態も予測される。」
 「4割の電力を原発から供給しているウクライナのエネルギー供給にも重大なダメージを与える。」と指摘した。
 この危険が今、現実のものになっている。
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