[2022_11_13_02]【コラム】経団連・電事連言いなり、岸田総理の原発政策_森高龍二(エコノミック_ニュース2022年11月13日)
 
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【コラム】経団連・電事連言いなり、岸田総理の原発政策_森高龍二

 経団連と電気事業連合会(北海道〜沖縄までの電力会社10社で構成)いいなりの原発政策を推進する岸田内閣。ブレーキを掛けられるのは原子力規制委員会と世論のみ。国民は原発政策に関心を持って注視することが必要だ。未だ解決できない福島第一原発事故の深刻な状況を忘れてはいけない。

 岸田政権で今、原発政策が大きく変わろうとしている。「原発の新増設は現時点で想定していない」と安倍晋三氏でさえ、総理当時に衆院本会議で答弁し、菅義偉前総理も総理当時「新増設、建て替えは現時点で想定していない」と新増設には踏み込まなかった。それを岸田文雄総理は8月のGX実行会議で「新増設の検討を」と指示した。電事連、経団連が強く求めた注文通りの指示内容。
 「革新炉」や「革新軽水炉」というものに、何か安全性を含め新しいものと惑わされてはいけない。革新軽水炉の実態は東電福島第一原発の「沸騰水型軽水炉」や米国スリーマイル島の「加圧水型軽水炉」の設計をベースにするもので革新と呼べるのかも疑問。
 そもそも「新増設」に踏み入ること自体、原発依存逓減の流れに反する。原発稼働で次々生みだされる「核のゴミ問題」をどうするのかも解決できないまま、新増設は『無責任』としか言いようがない「原発政策」だ。
 加えて経団連、電事連いいなりの原発政策は「原則40年」「最長60年」としている原発稼働期間の撤廃にまで及ぼうとしている。世論の反発から40年、最長60年とする稼働期間削除をあきらめ、「検査などで稼働していない期間(原発停止期間)を40年、60年の対象期間から除外」して延命を図る方向に傾いたとする報道もある。
 投資に見合った経済効果を求め、何とか延命策をとの姿勢で、東電福島第一原発事故の反省から生まれた精神が生かされているとはとても思えない検討だ。
 経産省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員などを務めた龍谷大学の大島堅一教授は「運転期間の延長は原発の危険を一層高める」(赤旗10月9日日曜版)と警鐘を鳴らす。
 「海外では60年超の運転期間を認めているというが、実際に60年動いた原発はどこにもない。60年の年数以前に原発の多くが廃止になっているからだ」といい「原子力産業に政府が取組めば取組むほど再生エネルギーなど本来やらなければいけない気候変動対策を遅らせることになる」と警告する。

 原子力規制委員会は政府が原発稼働期間の60年超へ道を拓こうとする動きに対し、安全性を担保する必要から「老朽化に対応する安全規制」の在り方の検討に入っている。
 今月2日示された案では運転期間延長認可と高経年化技術評価を一本化し、運転期間延長認可の審査については現行の「40年」を10年前倒しし「30年」とし、延長の場合「10年を超えない期間ごとに原子力規制委員会の認可を得ることを義務付ける」。
 この期間については「運転停止期間を算入する」「審査においては最新基準で適合を求める」とし、違反すれば「許可取り消し・運転停止命令」を行えるよう法改正を実施する方向としている。
 原子力規制委員会の山中伸介委員長は、再稼働審査などで停止した年数を運転期間から除外して延命を図ろうとする意見に対して、原発は停止期間中も設備の劣化は進むとし「カレンダー通りやらせていただくことが規制として非常にスムーズな規制ができる、暦年で評価するのが委員会の共通認識」と強くけん制した。
 原発は「安全性最優先」のはず。委員長の発言は重いし、委員長の姿勢を高く評価したい。停止期間を除外するべきではない。
 また最初の認可審査が30年、それ以降10年を超えない期間ごととしているが、50年を超えれば7年を超えない期間ごとに短縮しても良いのではないか。劣化度を重視した安全確保優先基準を徹底していくことが求められよう。
 電事連や政府圧力に屈することなく、規制委としての重責を果たしていただきたい。原発唯一の歯止めは規制委と世論しかない。原発事故の深刻さを忘れないために、経済産業省のエネルギー部門は霞が関から福島県に移した方がよさそうだ。

 原発を巡っては『武力攻撃』への対応も大きな課題を抱えている。山中委員長は「原子力規制委として施設・設備での対応は求めていない」とし、「実際に攻撃事態になったと政府が判断すれば委員会として原子炉の停止命令をかけることができると考える」とこの問題には国会でも消極答弁。原子力規制委員会の対象外の問題としている。しかし、ミサイル攻撃に対して施設や設備が一定対応できていてこそ、被害を最小にできる。
 ロシアによるウクライナ侵略での原発への攻撃という事実を踏まえれば、ミサイル攻撃から危険な原発をどう守るのか、安全性を高めるうえでも、原子力規制委員会があらゆるリスクに対して、どうあるべきかを検討、議論していくことを強く求めたい。(編集担当:森高龍二)
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