[2022_11_11_03]大型原発停止のリスクが顕著に 最新鋭フィンランド原発が長期停止か 全体の14%の電力設備が使用不能に 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年11月11日)
 
参照元
大型原発停止のリスクが顕著に 最新鋭フィンランド原発が長期停止か 全体の14%の電力設備が使用不能に 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ フィンランドのオルキルオト3号機が営業運転出来ないまま冬を迎えるかもしれない。
 所有者のテオリスーデン・ボイマ(TVO)がフランスのアレバ社から導入したEPR型原発、160万キロワット級の大型原発であり、これ1基でフィンランドの電力の14%をまかなえるとされている。
 この原発の二次系給水ポンプの羽根車4台すべてで亀裂が入り、運転出来なくなった。

◎ EPRは加圧水型軽水炉なので、一次系と二次系は蒸気発生器で熱交換をする。
 従って、二次系の冷却水には放射性物質がほとんど含まれない。
 そのことから、TVOは仮に給水ポンプの羽根車が運転中に次々に破断しても「安全上の問題は無い」としているが、これは正確ではない。
 二次系でも冷却材を喪失すれば、蒸気発生器の外側の冷却水がなくなり、一次系から熱を逃がせなくなる。
 原子炉を停止していたとしても、崩壊熱を除去できなければ炉心損傷を起こすことは、福島第一原発事故で明らかだ。

◎ しかも沸騰水型軽水炉よりも圧力容器の体積が小さい加圧水型軽水炉の場合、一次系の蒸発は速やかに進む。主に加圧器逃がし弁から放出する。ただし、蒸気となった冷却水はタンクに溜められる設計なので大気中に放出されるわけではない。
 しかしECCSから炉心への注水が行われ、それも蒸気となってしまえば、いずれは冷却水の喪失から炉心露出へと進む可能性はある。

☆もう一つの原発リスク

◎ フィンランドの場合、目の前に迫る危機はエネルギー不足だ。
 オルキルオト3号機はフィンランドの電力の14%を産出するとされる。これが動かなければ、深刻な問題になる。
 フィンランドには他にオルキルオト1、2号機、ロビーサ1、2号機がある。
 オルキルオト1、2号機は沸騰水型軽水炉でそれぞれ86万キロワット、ロビーサ1、2号機は旧ソ連のVVER440で50万キロワットである。
 これらは運転中だが、フィンランドは電力の約3割をロシアやフランスなどから輸入していた。それが、今回のウクライナ戦争とフィンランドのNATO加盟申請などで国際情勢が混迷化し、ロシアからの電力と天然ガスの供給が遮断されている。

◎ この輸入分の多くを賄うことができると期待されたのがオルキルオト3号機。
 依然として12月27日に営業運転を目指すとフィンランドは表明しているが、給水ポンプの損傷理由が分からず、復帰の目処は立っていない。
 あわせて、ロビーサ原発も運転開始1977年と1981年。いずれも40年を超える老朽炉である。

◎ フィンランドは電力の3割以上を原発に依存してきたが、大型の発電所が動かせないリスクは、全土の電力不足に直結するリスクになっている。
 ヨーロッパはこれまで、こうした危機に対して縦横に張り巡らせた国際送電網を使って、国境を超えた電力取り引きで危機を乗り切れた。
 しかしウクライナ戦争によりエネルギーコストが上昇し、各国とも発電コストの高騰から、取引価格も高くなっており、電気を買うことも容易ではない。

◎ フィンランドの現状を見れば、このようなエネルギー危機に対して原発が回答になどならないことは明白である。
 仮にドイツが脱原発政策を採らず、今も17基程度稼働していたとしても、その発電電力量は欧州全体で見れば3%程度(2012年時点のドイツの消費電力量÷EUの消費電力量×ドイツの原発比率)に過ぎず、いわば「焼け石に水」。
 ロシアが占める天然ガス供給量の大きさを考えれば、フランスが石炭火力を天然ガス火力に置き換えてきたところに夏の渇水などで原発が長期停止した方が影響ははるかに大きい。

◎ 日本は地震国であり、東海第二など、これまで何度も地震で揺さぶられている。
 もし動いていたら、何度も停止を余儀なくされていたかもしれない。その時に原発が損傷しない保証はない。
KEY_WORD:ウクライナ_原発_:FUKU1_:TOUKAI_GEN2_: