[2022_11_09_05]原発の運転期間60年制限を撤廃するか、長期停止期間の除外か、とにかく老朽炉を使い倒したい経産省 断じて認めてはならない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年11月9日)
 
参照元
原発の運転期間60年制限を撤廃するか、長期停止期間の除外か、とにかく老朽炉を使い倒したい経産省 断じて認めてはならない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
◎ 原発の新増設も、新型炉の建設も、今すぐ出来るわけでもないし、絵に描いた餅でしかないと思っている経産省は、いまある原発を徹底して使い倒して、つじつまを合わせることで、岸田政権の原発回帰政策の目玉にしようという魂胆だ。
 しかし老朽炉は確実に原発事故リスクを高める。
 ぼろぼろの原発を動かし続けるリスクをものともしない人たちを、何としても止めないと次の事故は確実にすぐにやってくるだろう。

◎ 11月8日の資源エネルギー庁の小委員会(総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会)では
1.現状維持
2.運転期間の上限撤廃
3.運転期間から休止期間を除外する
との3つの案が示された。

◎ このうち、これまで報道等で有力と伝えられていた「2」の上限撤廃ではなく、「3」の休止期間除外が有力となったという。
 「3」とは、「上限は維持しつつ、原子力規制委員会による審査や、裁判所による仮処分命令などで運転を停止した期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする選択肢」(NHKより)
 経産省の資料によると、これは「他律的な要素」により「事業者が予見し難かった」理由で長期停止を余儀なくされ経営上のリスクを負ったことを、運転延長により「救済」しようとするものだ。
 この例としてあげているのが「東日本大震災発生後の法制度、行政命令、裁判所による仮処分等により止まっていた期間」である。

◎ しかし、これは本質的に誤っている。
 東北地方太平洋沖地震により地震と津波に破壊されたのは、あの場所に原発を立地し、その後漫然と運転を続けていた東京電力の責任であることは、繰り返し「裁判所の判決・決定」で確定した事実である。
 わざわざ上記「裁判所の仮処分等」では、上級審により是正されたものは含めないとしているとおり、確定した判決により停止していた期間は司法により止めていたことが正当と判断していたことであって、これを原子力規制・推進の行政側がひっくり返すなど、三権分立の日本では許されない。

◎ 同様に、裁判所によって「違法」(最高裁判所の判決により東電の賠償責任は全て認められている)とされている東電福島第一原発の2011年までの運転継続行為についても、その後においても地震や津波対策の不十分な状態で運転を継続することなど、改正原子炉等規制法により法令上認められないのだから、「1」も「2」も同様に、新規制基準適合性がない原発は動かせるわけがない。

 すなわち、許可されていない原発の運転停止期間は、何ら救済すべきものではなく、それをすれば、ありとあらゆる、「期間を定めて許認可を必要とする」設備を有する産業において一斉に不平等、不公正の批判が沸き起こるだろう。

◎ 新規制基準適合性審査において義務づけられる「特定重大事故等対処施設」の不存在を運転停止の根拠としている原子炉等規制法をそのままにして、その建設にかかる時間を除外するなどといった考え方は、自分で作った法律の運用さえ変えて特定重大事故等対処施設が出来る前に既に再稼働を認めてきた(ただし、工事認可後5年間に限る)「電力会社の救済」を行ってきた規制委の措置とも矛盾する行為である。

 こんな法律改正は、普通は「矛盾した法令改正」として内閣法制局は拒否しなければならない。
 「誰のための法改正、それは電力会社の為なのよ」とうたう原子力推進議員の顔が思い浮かばないか。この連中のために私たちは危険にさらされている。
 断じて認めてはならない。

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 老朽原発延命へ拙速議論 経産省、60年超稼働案
 規制委は「停止期間除外できず」

 原則40年、最長60年と規定された原発の運転期間は、8日の経済産業省の有識者会議で、60年超の運転を可能にする案を支持する意見が相次ぎ、リスクの高い老朽原発の長期運転への流れが本格化する。
 延長の可否を審査する原子力規制委員会と見解が異なる案もあり、議論の先行きは見えない。(小野沢健太)(後略)
 (11月9日「東京新聞」朝刊2面より抜粋)
 詳しくはこちら
https://www.tokyo-np.co.jp/article/212795
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