[2022_11_03_04]60年超の原発も運転容認 原子力規制委 仕組みの上では無期限も可能に(東京新聞2022年11月3日)
 
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60年超の原発も運転容認 原子力規制委 仕組みの上では無期限も可能に

 ◆30年運転後10年ごとに審査

 原子力規制委員会は2日の定例会で、「原則40年、最長60年」とする原発の運転期間の規定を見直す政府方針を受け、60年を超えた原発でも10年以内ごとに設備の劣化状況を審査し、新規制基準に適合すれば運転を認める方針を示した。仕組みの上では、無期限運転も可能になりかねない。規制委はこれまでに審査を終えた全ての老朽原発で40年超の運転延長を認めており、厳格な規制となるかは分からない。
 会合で、規制委事務局が新たな規制の案を示し、委員5人から異論は出なかった。今後、電力会社側の意見も聞く予定という。
 案によると、原発の運転開始から30年となる前に、設備の劣化状況の評価や管理手順などを定めた計画の策定を義務づけ、規制委が妥当性を審査。認可されれば運転できる。その後も10年以内ごとに同様の審査をしていく。

 ◆安全性の確認内容は今後検討

 政府内では、審査などで停止している原発について、停止期間は運転年数から除く案も検討されているが、規制委は停止中も劣化は進むとして、運転年数から除外しない考えを示した。
 どのように安全性を確かめていくのか具体的な内容は今後に検討する。規制委の杉山智之委員は会合で「原子炉が古いほど(審査に)合格しづらい仕組みにする必要がある」と指摘した。ただ、現行の40年超の運転延長は、制度導入時に「例外中の例外」とされたものの、具体的な審査に入った原発4基全てが認可され、形骸化している。
 原発の運転期間を原則40年とする規定は、東京電力福島第一原発事故を受け、2012年に原子炉等規制法(炉規法)を改正して導入。40年を前に「特別点検」と呼ばれる詳しい劣化状況調査をした上で、1回に限り最長20年の運転延長ができる。一方で、福島事故前から運転開始後30年の原発に対し、10年ごとに設備劣化への管理手順を審査しており、この2つの制度を一本化するという。(小野沢健太)

 ◆規制委が前のめりで議論リード

 原発の60年超の運転を可能にする新たな規制制度の概要を2日に明らかにした原子力規制委員会。山中伸介委員長は記者会見で、「現行よりもはるかに厳しい規制になる」と強調したものの、規制委が前のめりで議論を進める印象は否めない。
 「大枠でこの通り進めていいか」。定例会での議論の終盤、山中氏の問いかけにほかの委員から異論は出ず、約45分間で議論を終えた。
 10月5日の定例会に経済産業省の担当者を呼び、政府の検討状況の説明を受けた後、山中氏は原則40年、最長60年とする運転期間の規定削除を容認する考えを報道陣に説明。経産省幹部は「委員長があのような踏み込んだ発言をするとは思いもしなかった」と驚いた。
 それからわずか1カ月後、運転期間の制限がなくなることを前提にした規制案を公表。経産省側は審議会での議論が続いており、運転期間の見直しについての検討は規制委がリードする状況が続いている。
 山中氏は2日の記者会見で、検討の早さを問われると「規制が滞ることがないように対応する責務がある」と説明。「運転開始の30年後から10年ごとにハード、ソフト両面で認可が必要になる」と規制の強化になる考えを示し、「原子炉が古くなれば、(規制基準適合の)立証はそれだけ困難」として、60年超の長期運転はハードルが高いことを強調した。ただ、法律で定めた運転期間の制限がなくなれば、無期限運転の可能性も残る。
 どのような点を審査していくのかについては「今後に議論する」と繰り返した。世界の中でも地震リスクが高い中、老朽原発の安全を確保できるのか問われても「慎重に議論したい」と述べるだけだった。(増井のぞみ)
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