[2022_10_31_04]ウクライナ侵攻で放射能汚染も 使用済み核燃処理の対ロ協力停止―「世界最大かつ最も危険」・ノルウェー(時事通信2022年10月31日)
 
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ウクライナ侵攻で放射能汚染も 使用済み核燃処理の対ロ協力停止―「世界最大かつ最も危険」・ノルウェー

 【キルケネス(ノルウェー)時事】ロシアのウクライナ侵攻が引き金となり、北極圏に放射能汚染が広がりかねない事態が生じている。侵攻後、ノルウェーはロシアとのあらゆる政府間交流を停止。ソ連時代の原子力潜水艦から出た使用済み核燃料を処理する協力も凍結された。1960年代前半に建てられ老朽化が進むロシア国内の貯蔵施設に残された大量の核燃料が、放置される恐れがある。
 ノルウェー国境からわずか50キロに位置するロシア北西部アンドレエフ湾には、原子力潜水艦から出た使用済み核燃料を貯蔵するソ連時代の海軍基地がある。80年代に貯蔵プールから漏水し、建物と周辺の土壌が汚染される事故が発生。基地の運用は停止された。
 だが、使用済み核燃料約2万2000個や放射性廃棄物約1万9000立方メートルは残された。貯蔵施設は窓ガラスが割れ、外壁の一部がはがれ落ちるなど老朽化が進む。核燃料のうち少なくとも7000個は破損しているとされ、ノルウェー政府当局は「世界最大かつ最も危険な使用済み核燃料の山」と指摘する。
 ノルウェーは2017年、欧米諸国と協力し、使用済み核燃料をロシア中部の最終処分場に移送する事業を開始した。これまでにほぼ半分が移送されたが、2月のウクライナ侵攻開始で支援は凍結。ノルウェー放射能・原子力安全機関のブレド・モラー氏は「ロシア側が移送作業を続けていると信じたいが、連絡を取ることもできず、向こうの状況はまったく分からない」と語る。
 モラー氏は、対ロシア国境近くで放射線量の観測を続けている。今のところ大気中の放射線量に変化はない。だが、戦争が長期化すれば、ロシア側で核燃料の処理に人や資金を割く余裕がなくなるのは確実とみられる。作業に必要なロボットや道具が壊れても、経済制裁で国外から部品を調達できない可能性がある。
 「使用済み核燃料が適切に管理されなければ、テロリストの手に渡るという最悪のケースも想定される」とモラー氏は指摘。「放射性物質の漏出が起きれば、健康被害が生じる水準に達しなくても、水産物輸出に風評被害が出かねない」と話している。
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