[2022_10_27_08]運転停止から11年余りの原発再稼働…「まだ1合目」の志賀原発2号機どう捉える?(北陸放送2022年10月27日)
 
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運転停止から11年余りの原発再稼働…「まだ1合目」の志賀原発2号機どう捉える?

 世界的なエネルギー価格の高騰などもあり、原子力発電所の再稼働をめぐる議論は再び熱を帯びていますが、運転停止から11年以上が経った石川県の志賀原発2号機について考えます。地域に暮らす人たちは何を思い、電力会社は今の状況をどうとらえているのでしょうか。

 原発再稼働…地元住民は“話したくない”

 志賀町赤住地区。260人が暮らすこの町は、志賀原発から最も近い集落です。
 空を見上げると、そこには2基の排気筒。公民館の敷地内には放射線量を測る測定器が設置されています。
 記者
 「志賀原子力発電所の停止から11年余りの時間が経ちました。周辺に住む人の意見はさまざまです」
 周辺に住む人
 「あるもんはやっぱり使わんと…そうやろ?私らも、あるもんが回って電気料金が安くなってくれればこれに越したことはないんやから」
 「再稼働しても必ずミスばっかりする。俺は反対だから(原発の)仕事はせんよ」「10年宙ぶらりというのは良いことではない。もうちょっとスピード感があっても良いという気はする」
 再稼働について賛否が分かれる中、“話したくない”とインタビューを断る人も多くいました。
 周辺に住む人
 「あの…いろんな物の考え方している人はおるさかいに、あんまり正直な話できんわいね。電力さんから色んな支援してもらっているのはわかるけどね」
 原発の再稼働について、北陸電力はその必要性を強調します。

 原発再稼働…“敷地内に断層”をどう判断するか

 北陸電力広報チーム・深元航平統括 課長
 「原子力については発電時にCO2を排出しないことに加えて供給の安定性、経済性にも優れていて非常に重要な電源だと考えている。安全を確保するのももちろん重要なのですが、地域のみなさんにご理解いただくことも重要だと思っている」
 北陸電力は現在、電力供給の5割から6割を火力発電でまかなっています。しかし、ウクライナ情勢の緊迫化で燃料価格は高騰。2年前は1トンあたり平均およそ80ドルだった石炭の価格も、ここ最近は400ドル前後とおよそ5倍に跳ね上がりました。さらに円安も追いうちをかけ経営を圧迫しています。
 志賀原発2号機は、東日本大震災が発生した2011年3月11日に、定期検査のため運転をストップ。福島第1原発の事故後には新規制基準が作られ、原子炉建屋などの重要施設の下に活断層がある場合、原発は再稼働できなくなりました。
 2016年3月、原発敷地内を通るS―1断層をめぐって原子力規制委員会の有識者会合で、「活断層と解釈するのが合理的」との判断が下されます。これに対し北陸電力は当初から「敷地内の断層は活断層ではない」と、真っ向から反論しています。
 北陸電力・金井豊 社長(当時)
 「これまでの有識者会合において当社から説明する機会が十分にない中で取りまとめられたもの。新規制基準への適合性確認審査の場においては参考意見として取り扱われるもの」
 北陸電力は、2号機の再稼働を目指して新規制基準に基づく適合性の審査を申請し、6年前から原子力規制委員会による審査会合が始まりました。長い間議論は続いていて、10月13日から行われた2回目の現地調査では、原発敷地内を通る10本の断層に活動性があるのかないのかが最大の焦点になりました。
 2日間の調査を終えた原子力規制委員会は、「活断層ではない」と主張する北陸電力の説明に対し一定の理解を示しました。
 原子力規制委員会・石渡明委員
 「基本的に北陸電力の主張する関係は規制委としても納得できる部分がある。地震・津波・火山等の自然ハザード側の審査でもまだ1合目。入口でまだ先はちょっと長い」
 登山に例えると“1合目”という表現でしたが、北陸電力は、再稼働へのスタートラインに立てたことを前向きにとらえています。

 再稼働に向けた1合目…しかし“道のりは険しい”?

 北陸電力広報チーム・深元航平統括 課長
 「委員からも当社の評価・説明について理解を深めたというコメントを頂戴しているので審査は着実に進展していると。資料の修正作業などすでに着手しているものもあるので時間をかけずにしっかり対応していきたい」
 一方で、審査会合で続く道のりはまったく平坦ではないととらえる声も…
 志賀町・堂下健一 町議
 「追試が何回もある感じ、“こういうことはどうですか”と。それに対して電力側が次から次へと出していく。今にも解決できるような場所をずっとしてきた、やっとここに来て6~7年経ってスタート地点という…」
 度重なる審査をこう分析するのは、20年以上にわたり反原発の活動に取り組む志賀町の堂下健一町議です。堂下さんは「再稼働を進める政府の取り組みによって、福島原発の事故が風化している」と警鐘を鳴らします。
 志賀町・堂下健一 町議
 「やっぱり福島の事故というのは私たちにとって大きなショックでしたよね。皆さんにわかってもらうというか…原発事故がひとたび起きるとどういう状況になるかというのは、ある意味で風化しつつあると思う。そういう意味では再度、私たちはひとたび事故が起きれば取り返しがつかない、ではなくて未来を失う」
 志賀原発の運転差し止めを求める裁判の38回目の口頭弁論が10月24日、金沢地裁で開かれました。しかし、敷地内断層に対する原子力規制員会の最終判断が出ない中、実質的に裁判は進んでいない状態です。世界的なエネルギー価格の高騰を背景に、注目を集める原発再稼働の動き。原発が、適切な電力供給の手段たりえるのか、私たち一人ひとりに問いかけられている課題です。

北陸放送
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