[2022_10_23_02]原発推進派の西氏が初当選 山口・上関町長選 建設計画は見通せず(毎日新聞2022年10月23日)
 
参照元
原発推進派の西氏が初当選 山口・上関町長選 建設計画は見通せず

 中国電力(広島市)が原発建設を計画する山口県上関町で、前町長の辞職に伴う町長選が23日投開票された。計画推進派の前町議会議長、西哲夫氏(75)が反対派の住民団体役員、木村力氏(75)を破り、初当選を果たした。投票率は74・97%(前回2011年は87・55%)だった。
 1982年に計画が浮上して以降、無投票だった15、19年を除く町長選で、推進派が勝利するのは10回連続となる。得票は西氏が1154票、木村氏が486票だった。
 11年の東京電力福島第1原発事故で計画は事実上凍結された。町が「原発に頼らないまちづくり」の模索を続ける中、岸田文雄首相が原発の新増設や建て替えなどについて検討を進める方針を8月に表明。無所属新人同士による11年ぶりの選挙戦は、計画の是非が改めて争点となった。
 西氏は、人口減少や高齢化に歯止めがかからない町への危機感から「原発誘致が町にとって唯一の起爆剤だ。その財源で町民の生活を支援していく」と主張。出馬を要請した地元の商工会や建設組合など推進派の団体も支えた。
 木村氏は、計画の白紙撤回と、計画に代わる新しい産業の創出などを訴えたが及ばなかった。【脇山隆俊】

 原発できるか見通しは立たず

 原発計画の是非を争点とした上関町長選は、計画推進派の勝利で終わった。ただ、国が打ち出した「原発回帰」の方針は現時点で明確に定まっておらず、町に原発ができるのか見通しが立たない状況に変わりはない。
 計画の凍結が続く中、町は2019年度から、売電で年間2億3400万円の収入を見込む風力発電施設を稼働。周辺に公園を整備し、観光振興を図る構想も打ち出した。しかし22年度の一般会計当初予算33億3300万円のうち、町税などの自主財源は16・9%の約5億6200万円にとどまる。資材価格の高騰で予定した福祉施設の建て替えの予算計上も見送るなど、原発関連の交付金が大幅に減った影響は小さくない。
 県が中国電に許可した建設予定海域の埋め立て免許の期限は23年1月に迫る。今回の選挙結果に、西氏は「当面は原発に頼らないまちづくりをせざるをえない」とする一方で「民意をしっかり背負って国にもの申し、県にも実情を訴えたい」としている。【脇山隆俊】

上関原発計画を巡る動き

1982年6月 中国電力の上関原発構想が表面化
2001年6月 経済産業相が電源開発基本計画への組み入れを決定
2008年10月 山口県知事が中国電の公有水面埋め立てを許可
2009年4月 中国電が予定地造成に着手
2011年3月 福島第1原発事故を受け県と上関町の要請で造成工事中断
   6月 知事が埋め立て免許延長を認めない考えを表明
2012年9月 30年代に原発ゼロを目指す新しいエネルギー・環境戦略を政府が決定   10月 経産相が「着工認めず」と発言
      中国電が公有水面埋め立て免許の延長を申請
2016年8月 県が中国電の埋め立て免許延長を許可
2019年7月 県が埋め立て免許の2度目の延長を許可
2022年8月 岸田文雄首相が政府の会議で原発新増設の検討を指示
KEY_WORD:上関原発計画_:FUKU1_: