[2022_10_07_02]「3.11」以前に逆戻りの岸田政権 (上)(2回の連載) 重大事故を準備する国策原発を許さない!| 核のゴミをどうするのか 中村泰子(たんぽぽ舎ボランティア)(たんぽぽ2022年10月7日)
 
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「3.11」以前に逆戻りの岸田政権 (上)(2回の連載) 重大事故を準備する国策原発を許さない!| 核のゴミをどうするのか 中村泰子(たんぽぽ舎ボランティア)

 
◎新たな金づるGX

 岸田内閣が6月7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022」では5つ重点投資分野が挙げられている。
 その1つが、官民連携で脱炭素社会の実現に取り組む「グリーントランスフォーメーション(GX)」への投資である。
 150兆円超の官民投資に向けたカーボンプライシング構想とかGX経済移行債(仮称)とかを検討しているようだ。
 要は巨額マネーが動くことが目的と窺える。

 政府は7月27日にGX実行会議(議長:岸田文雄首相)を発足させた。実行会議は、関係閣僚と業界識者13名(連合会長の芳野友子氏もメンバー)で構成される。
 東電福島第一原発事故後の「脱原発」の流れを反転させ、「原発ルネッサンス」の再来をめざしている。脱炭素を謳う工程表を年内にまとめるとした。
 8月24日の第2回GX実行会議で、岸田首相は原子力に関して、再稼働への関係者の総力結集、運転期間の延長など既設原発の最大限活用、次世代革新炉の開発・建設などの検討をするよう指示した。
 ウクライナ危機を口実に「電力逼迫・原発必要」と叫び、この10年貯えてきた財界の要望に応えて政権安泰を得ようとしている。
 岸田の「聞く力」は財界のために発揮される。
 次世代原発(革新軽水炉、小型モジュール炉、高温ガス炉、高速炉、核融合炉)は開発途上で実用化まで少なくとも20から50年かかる見込みで、その間の研究開発費が出続けることが開発者にとって都合がよいのだ。
 これまで原子力行政は、科学技術を装って人々を欺き、一貫して民意無視、過酷事故を起こせば被害者を踏みにじってきた。原子力推進側は国策をいいことに、税金や電気料金という財源を潤沢に使える原発・核燃料サイクル事業を絶対に手放したくないだろうし、次世代原発の新増設には飛びつきたいだろう。
 政府は次の過酷事故が起きても、福島第一のように10年もすれば下火になると踏んでいるのだろう。

◎核のゴミをどうするのか

 原発行政で最大の無責任は、放射性廃棄物問題だ。「トイレなきマンション」、「10万年のお守り」と言われて久しいが、1ミリも解決していないどころか、状況は悪化の一途だ。
 福島第一の収束・廃炉作業で発生する放射性廃棄物は莫大な量である。
 これ以上の放射性廃棄物の増加を極力抑えなければならない。
 政府は原発の使用済燃料は再処理して使うので資源とみなすとしているが、再処理工場の稼働は技術的に困難で、もしできても再処理工程で膨大な放射性廃棄物が発生する。
 原発・核燃料サイクル路線を放棄し、これ以上の原発稼働をやめ、核のゴミを増やさないことが現世代の責任である。問題を先送りして逃げ切ろうというのは卑怯だ。始末に負えない危険物の増大を放置し、未来世代に押し付けてはいけない。(下につづく)
   (「思想運動」2022-10-1号 No.1081から了承を得て転載)
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