[2022_09_02_04]IAEA調査チーム 原発調査を開始 砲撃続き順調に行えるかが焦点(NHK2022年9月2日)
 
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IAEA調査チーム 原発調査を開始 砲撃続き順調に行えるかが焦点

 2022年9月2日 6時30分
 ウクライナ南東部にあるザポリージャ原子力発電所の安全を確保するため、IAEA=国際原子力機関の専門家チームが1日、原発の調査を始めました。調査は3日まで行われる見通しですが、原発や周辺の地域では連日、砲撃が続いていて順調に調査を行えるかが焦点となっています。
 ウクライナ南東部にありロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所では、相次ぐ砲撃によって一部の施設に被害が出ていて重大な事故につながりかねないとの懸念が高まっています。
 安全性の確保を目指しウクライナ入りしたグロッシ事務局長率いるIAEAの専門家チームは1日、ザポリージャ原発に到着し調査を開始しました。グロッシ事務局長は原発の管理担当者と面会し「原発事故を防ぐことが主要な目的であり、すべての関係者の合意を見いだすため可能なかぎりのことをする」と強調しました。
 調査にはロシア国営の原子力企業ロスアトムの職員も同行したということで、調査の後、グロッシ事務局長は記者団に対し「われわれはこの数時間で多くの情報を得た。確認したかった重要なものは見ることができた」と評価しました。そして「最も重要なことは、IAEAの専門家が原発に常駐することだ」と述べ、常駐化による現状把握が必要だとの考えを改めて示しました。
 一方、原発や周辺の地域では1日も砲撃や戦闘が相次いだとみられ、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は「ロシア軍による砲撃があり、安全装置が作動して5号機が停止した」として、ロシア軍の攻撃によって、稼働中の2基の原子炉のうち1基が停止したと明らかにしました。
 これに対し、ロシア国防省は1日「ウクライナ軍の工作員が原発を奪還しようとしている。グロッシ事務局長やIAEAの専門家を『人間の盾』にする計画だった」などと主張しています。
 「エネルゴアトム」などによりますと、グロッシ事務局長とIAEAの一部の専門家は数時間滞在したあと原発から離れ、残った専門家が3日まで調査を行う予定だとしていて、緊迫した状況が続くなか順調に調査を行えるかどうかが焦点となっています。

 専門家 “重大な事故につながる危険性ある”

 ウクライナで長年、原子力の安全性について研究をしてきた福島大学環境放射能研究所のマーク・ジェレズニャク研究員は、まずザポリージャ原子力発電所での事故の危険性について「原子力施設が攻撃され、外部電源や非常用電源を失うことで原子炉や使用済み核燃料の冷却ができなくなり、大事故を引き起こすおそれがある」と指摘しました。
 そのうえで戦闘が続く過酷な環境のなかで「原発で働く運転員が疲労やストレスで人為的なミスをして、重大な事故につながる危険性がある」と懸念を示しました。
 また、周辺住民の安全確保について「原発事故が発生した際に誰が主導してどのように避難行動をとらせるのか、全く見通しがたっていない。住民を適切に避難させることは極めて難しい状況だ」と話していました。
 さらに、IAEAの専門家チームがザポリージャ原発で調査を始めることについて「IAEAの調査がロシア軍の撤退を促すことにはならないと思うが、専門的な見地から、危機的な状況を世界に発信してほしい」と強調しました。

 ゼレンスキー大統領“客観的な調査結果 望む”

 IAEA=国際原子力機関によるザポリージャ原発での調査について、ゼレンスキー大統領は1日、ロシア側が専門家チームを欺こうとし、独立したメディアの同行も認めなかったと批判したうえで「それでも客観的な調査結果を得られることを望む」と述べました。
 そして「大事なのは原発の非武装化で、グロッシ事務局長とも調査前に協議したことだが、IAEAからまだ適切な説明を受けていないのはよくないことだ」と不快感を表したうえで、原発の非武装化とウクライナの管理下に完全に移すことの重要性を改めて強調しました。
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