[2022_08_31_01]政府、漁業継続に新基金創設へ 行動計画改定、風評対策と別枠(福島民友新聞2022年8月31日)
 
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政府、漁業継続に新基金創設へ 行動計画改定、風評対策と別枠

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、政府は30日、首相官邸で関係閣僚会議を開き、風評被害対策や賠償に関する行動計画を改定した。漁業関係者らの支援に向け「将来にわたって安心して漁業が継続できるよう、基金により持続的な対策を講じる」との項目を追加した。今後、風評対策として既に設けた300億円の基金とは別枠で、漁業継続の支援に特化した基金を創設する方針。
 政府関係者によると、今後創設する基金の財源について、経済産業省は2023年度予算の概算要求で、金額を明示しない「事項要求」として海洋放出に伴う水産業への影響対策を盛り込む方針を固めた。金額の詳細は年末までの予算編成過程で調整する。
 漁業継続を支援するための具体的な取り組みについては、県漁連の要望や水産庁を含め関係省庁などの意見を踏まえて決定する見通し。
 西村康稔経済産業相は30日の閣議後の記者会見で「処理水による影響を乗り越え、持続可能な漁業の実現に向けた対策を講じるための基金を創設すべく取り組む」と述べた。
 海洋放出方針を巡っては、全国漁業協同組合連合会(全漁連)が「断固反対」の立場を堅持している。政府は21年度補正予算で、需要が落ち込んだ水産物を一時的に買い取るなどの風評対策に重点を置いた300億円の基金を設けたが、全漁連は基金とは別枠で、漁業継続を支援する仕組みの構築を求めていた。
 改定した行動計画では、処理水の海洋放出に向け「漁業の将来への不安が増し、漁業をつないでいく意欲がくじかれるとの強い懸念が示されている」と漁業関係者に寄り添う姿勢を強調した。漁業関係者の要望を踏まえた形で基金を創設することで、放出への理解を得たい狙いがあるとみられる。
 政府、東電は処理水の来春の海洋放出開始を目指している。
 年内にも賠償基準 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、政府は30日、処理水放出により風評被害が生じた場合の賠償基準を年内にも取りまとめ、公表するよう東電を指導する方針を明らかにした。同日に改定した処理水処分の行動計画に明記した。
 新たな損害賠償を巡っては、風評を懸念する漁業者を中心に各種団体から基準を早期に示すよう求める意見が相次いでいた。
 政府と東電は、関係団体からの意見聴取を踏まえ、業種別の賠償方針を具体化させ、地域・業種の実情に応じた賠償基準をまとめる方針だ。
 行動計画によると、政府と東電は賠償基準の策定に向け、風評被害を推測する手法や賠償額の算定を進める。算定に際し▽基準年の設定▽参照する統計データの選択▽処理水以外の要因の扱い―の3項目について関係団体と調整、意見交換するとした。
 政府は、東電が賠償基準を定めた後、風評被害の推測手法や賠償額の算定方法が、実際に生じた被害と見合っているかどうかを検証して、その結果に応じて見直すよう東電を指導する。
 東電は30日、「政府の基本方針を踏まえた対応を徹底し、風評影響の最大限の抑制に向け、当事者としての役割を果たす」とのコメントを発表した。賠償については「関係する方々の意見を丁寧に伺い、適切に準備していく」とした。
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