[2022_08_27_01]ウクライナ戦争で原発が「核爆弾」に変わる恐怖 (その1) 戦争における原発攻撃の問題点 ザポリージャ(ザポロジェ)原発 (3回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2022年8月27日)
 
参照元
ウクライナ戦争で原発が「核爆弾」に変わる恐怖 (その1) 戦争における原発攻撃の問題点 ザポリージャ(ザポロジェ)原発 (3回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎)

 小見出しの紹介
1.戦争における原発攻撃の問題点
2.ウクライナの原子力施設
3.ザポリージャ(ザポロジェ)原発
  以上を(その1)に掲載
4.戦場では電力網も標的になる
5.国際法の体制
  以上を(その2)に掲載
6.ジュネーブ条約追加議定書と原発
   (その3)に掲載

1.戦争における原発攻撃の問題点

 2月24日、かねてから懸念されていたロシア軍によるウクライナへの侵略、ウクライナ戦争が始まった。
 ウクライナ戦争には他にはなかった大きな特徴がある。それは、欧州随一の原発大国に対する本格的な武力攻撃であり、原発そのものをターゲットとしたことだ。
 慌てふためいたのは、国際原子力機関・IAEAだ。
 グロッシー事務局長は繰り返し原子力施設への攻撃を非難し、自らも現地を視察、ウクライナの支援を続けるとしている。
 戦争が始まった直後、ロシア軍は1986年に重大事故を起こして廃炉になったチェルノブイリ原発を占拠した。管理していた従業員を拘束し、周囲に埋設されていた放射性物質を掘り起こすなどして地域に汚染を拡散させた挙げ句に、3月末に撤退した。
 ロシア軍は、南部にあるザポリージャ原発にも進撃し2月28日に占拠した。
 現在(7月17日)も4ヶ月以上にわたり原発はロシア軍の支配下にある。しかし6基のうち2基は運転を継続している。

2.ウクライナの原子力施設

 ウクライナは欧州でも最大級の原発大国だ。
 国内には4箇所に15基の原発があり、その他にチェルノブイリ原発事故の後に作られた、使用済燃料プールを含む放射性廃棄物の管理施設がある。
 また、最前線の都市ハルキウにも原子力研究施設があり、それぞれ放射性物質が保管されている。
 ウクライナの電力は、半分を原発で賄っているので、これらが停止したら電力不足に陥る。そのため、戦争中でも常に7〜8基が運転を継続している。(ザポリージャ原発2基、リビウ原発2基、南ウクライナ原発2基、フメリニツキー原発1基の合計8基。7月17日現在)
 ザポリージャ原発6基で合計出力は600万kW、欧州最大級の原発だ。
 表のように。ウクライナの原発は全て旧ソ連製でVVER440とVVER1000の二つのタイプ。いずれも加圧水型軽水炉であり、日本では美浜原発などの関西圏のものに似ている。
 チェルノブイリ原発はRBMK(圧力管式黒煙チャンネル炉)で、4基が稼働していたが4号機が爆発して世界規模の汚染「地球被ばく」を引き起こし、それが遠因でソ連が崩壊、2000年には最後に残っていた3号機が廃炉になった。それでも2000年まで動かしていたこと自体、私たちには到底理解できない。
 言い換えれば事故直後に全機廃炉になった福島第一原発が、メルトダウンした1,2,3号機の横で今も5、6号機が動いているに等しい状況だから、その違和感は理解できるだろう。それほどに電力不足は深刻だった。

3.ザポリージャ(ザポロジェ)原発

 3月3日夜、ロシア軍はザポリージャ原発を占拠し、その設備の一部を破壊した。幸い、原子炉のある建屋ではなく訓練管理棟とみられており、守備隊との交戦があったと考えられている。原発周辺の放射線レベルは、問題にはならなかった。
 しかしこの攻撃と占拠は、核による大惨事の恐れを拡大し続けている。戦争で原発が攻撃対象になったこと、戦場に原発があることへの想定を超えた危険性が明確になった。
 現在、ロシア軍は原発の敷地内にミサイルを配備し、ここから攻撃をしているという。ウクライナ側の攻撃を受けないように、原発を盾にして攻撃をするなど恐るべき事態である。
 戦争は続いており、ロシア軍の原発占拠も続いている。現在、ウクライナ政府は原発を管理していない。IAEAも立ち入りを拒まれたままである。原発は稼働しており電力はウクライナ各地に送られている。これは原発へのさらなる攻撃がいつでも起こり得る状況が現在進行形で出現していることを意味している。
  (その2)に続く
     (「市民の意見30の会・東京」発行『市民の意見』No.192
                 2022/8/1より了承を得て転載)
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