[2022_08_24_08]夏の電力逼迫騒動の裏で定期検査を延長した玄海原発3号機 一方で再稼働を前倒しした玄海4号機 運転と停止を短い期間に何度も繰り返すと 事故リスクを上げる結果になる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年8月24日)
 
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夏の電力逼迫騒動の裏で定期検査を延長した玄海原発3号機 一方で再稼働を前倒しした玄海4号機 運転と停止を短い期間に何度も繰り返すと 事故リスクを上げる結果になる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 九州電力玄海原発は、現在4号機が稼働中で3号機は止まっている。
 夏の電力逼迫騒動の中で、動かない原発の存在は、あまりにも知られていない。
 政府がこれだけ節電を呼びかけ、動かせる原発を全部動かすといっているのだから、再稼働原発は全て動いているに違いないと多くの人々が思っているのかも知れないが、実際には「法令通り」止まっている原発がある。

◎電力逼迫危機を煽ってみても稼働できない原発

 九州電力玄海原発の場合、今年1月21日に定期検査入をした3号機は、当初6月25日に再稼働する予定だった。
 ところがこの原発は運転中の昨年11月30日から、一次冷却材中の放射性ヨウ素の濃度が上昇しており、監視しながら運転を続けていた(その段階で止めないことも問題だが)ことで、定期検査時に燃料用集合体全数漏えい検査をする必要が生じていた。

◎燃料漏えいで定検延長

 検査の結果、やはり漏洩燃料の存在が明らかになり、交換することになった。
 この原発にはウラン燃料体173体、MOX燃料体20体を入れてプルサーマル運転をしていたが、漏洩燃料は中心部分のMOX燃料に隣り合った場所のウラン燃料体だった。
 この交換や点検に時間を要することになったため、当初計画していた6月25日原子炉起動を取りやめ、2023年1月20日に遅らせることを、3月30日にプレスリリースしている。

◎「特重(特定重大事故等対処施設)」のない玄海原発3、4号機

 実は、玄海3、4号機は、未だ「特定重大事故等対処施設」が出来ていない。
 「特重」未設置原発の運転可能期間は、再稼働の工事認可があってから5年とされていて、その期限は3号機が2022年8月24日、4号機が9月13日になっている。
 このため3号機は、この夏に再稼働しても8月24日(つまり今日)までしか動かせない。
 立ち上げたり止めたり、といった作業でも、不測の事態を引き起こす可能性はあるし、第一、原子炉の健全性の観点からも起動停止を頻繁に繰り返すべきではない。
 そのため、夏のピークに稼働させることは断念して、定期検査期間を「特重」の完成後の2023年1月20日に遅らせることにした。
 一方、これに対して4号機は、2022年4月30日から定期検査入りした後の工程を変更して(具体的に何をどう変更したのかは明らかにされていない)夏の電力需給対策として再稼働を9月21日から7月10日に前倒ししたが、「特重」は出来ていないので、9月12日に定期検査入りし、「特重」完成後の2023年2月23日に再度動かすという。
 こちらは、稼働停止を短い期間に何度も行うこととなるので、先に述べたように圧力容器などの負荷の掛かる場所の劣化が進むことになり、また、運転と停止を短い期間に何度も繰り返すことで事故リスクを上げる結果になる。
 これらが九州電力玄海原発の現状である。
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