[2022_08_16_05]六ケ所再処理工場完工 延期幅が焦点(東奥日報2022年8月16日)
 
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六ケ所再処理工場完工 延期幅が焦点

 日本原燃は六ケ所再処理工場の「本年度上期」完工を事実上断念した。今後は延期幅が焦点となる。原子力規制庁から工程の変更を示すよう迫られたが、完工に向けた手続きには規制側の審査をはじめ自社で期間を見定められないものもあり、ジレンマを抱える。新たな完工時期について、原燃はいったん「未定」と発表した上で、従来より目標時期に幅を持たせたり、審査進捗(しんちょく)に応じて目標を設定するなど、これまでと異なる提示方法も検討する方針だ。
 「延期も含めて考えなければならない時期が来た」 原燃の増田尚宏社長は先月29日の会見で、再処理工場の工程見直し着手を示唆。「(上期の期限まで)2カ月なので、その中に入れ込むという見直しはなかなか難しい」と、本年度上期完工の事実上断念を表明した。
 原燃にとって26回目となる延期はもはや避けられない状況だった。福島第1原発事故を経て厳格化された新規制基準に工場を適合させるための追加の工事や、工事に必要な詳細設計「設計・工事計画の認可」(設工認)の審査、原燃自らが行う使用前検査と、各種の手続きが進んでいないためだ。
 新工程を探る原燃に対し、同庁の長谷川清光・安全規制管理官は今月8日の審査会合で「困難な工程にとらわれて丁寧な仕事ができないのは本末転倒だ。実行可能な工程を検討していただきたい」と要求した。
 ただ、原燃が延期幅を確定できる現状にはない。最大の課題となっているのが、約10万点の機器・設備などが対象となる設工認だ。原燃側の不備が響いて規制側の審査が長期化しており、いつ全ての認可を得られるか、その時期を見通すことは極めて困難だ。
 比較的、かかる期間が分かりやすいとされる工事も、世界的な半導体不足で一部に遅れが出てきた。工場の使用前検査の後には、規制側の確認を経なければ工場は完工とはならない。検査、確認にどれほどの時間がかかるかも未知数だ。
 同時並行で進む手続きはそれぞれに不確定要素をはらみ、増田社長は「これらを組み合わせて一つの工程表をつくるのは非常に難しい」と苦しい実情を吐露する。これまで「○年○月」「○年度上期」としてきた目標設定を見直し、さらに幅を拡大したり、複数の段階での目標設定を検討したりなど、提示の方法も再考することを明らかにした。
 ここまで手続きに時間を要しているのはなぜかー。増田社長は「設工認に対して準備不足で、(資料や説明の)品質レベルが低かった」と釈明、さらには、過去の許認可の経験よりも安全の要求レベルは高いところにあったのを見誤ったーと分析した。
 原燃は対応を強化するため、約400人の社内担当者らの執務場所を1カ所にまとめたほか、各電力から原発の審査経験者などを投入するなどさまざまな手を打ってきた。ただ、これらに対して原子力規制委員会の更田豊志委員長は「目立った効果が出ているわけではないというのが正直なところ」との評価だ。
 規制側はかねてより、現在のスピードでは完工までにかなりの時間を要するとの懸念を原燃に伝えてきた。更田委員長も現状について「ある意味、序盤と言っていい」との認識を述べ、設工認や検査、確認などのやり方次第では「本当に時間がかかる」と話した。ある幹部は、このままでは延期幅は年単位になるーとの見解を示しつつ「原燃はしっかり計画性を持ってやってほしい」と苦言を呈した。
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