[2022_07_14_03]勝俣恒久元会長ら4人に13兆3210億円支払い命令 東京地裁 東電の株主代表訴訟(福島民報2022年7月14日)
 
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勝俣恒久元会長ら4人に13兆3210億円支払い命令 東京地裁 東電の株主代表訴訟

 2022/7/14 09:50 2022/07/14 09:50
 東京電力福島第一原発事故を巡り、東電の株主48人が旧経営陣5人に対し、津波対策を怠ったために会社に損害を与えたとして、総額約22兆円の損害賠償を東電に支払うよう求めた株主代表訴訟の判決で、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は13日、勝俣恒久元会長(82)ら4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。旧経営陣個人の賠償責任を認めた初の司法判断で、原子力事業者の経営や安全対策に影響する可能性がある。賠償額は国内の民事訴訟で最高額とみられる。
 朝倉裁判長は津波対策を取れば「事故を防げた可能性は十分あった」とした上で、「重大事故が生じないよう最低限の津波対策を速やかに指示すべきだったが、取締役としての注意義務を怠った」と判断した。旧経営陣は勝俣氏、清水正孝元社長(78)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)、小森明生元常務(69)の五人で、小森氏を除く四人に賠償を命じた。
 朝倉裁判長は判決理由で、争点とされた国の地震調査研究推進本部が2002(平成14)年に公表した地震予測「長期評価」について、地震や津波の専門家による適切な議論を経て承認されており「相応の科学的信頼性が認められる」と認定。これに基づけば津波は予見できたとした。
 東電子会社が2008年3月に長期評価を基に、福島第一原発に最大15・7メートルの津波が到達すると試算したことを巡る旧経営陣の当時の対応を検証した。原子力部門の「ナンバー2」だった武藤氏については、長期評価の信頼性を「不明」と独自評価し、外部の土木学会に検討を依頼したまま、津波対策を取らず放置した対応を「著しく不合理で許されない」と断じた。
 経営トップの勝俣氏らには武藤氏の判断に不合理な点がないかを確認する取締役としての注意義務を怠ったと指摘。土木学会による検討の間、完成まで時間がかかる防潮堤などだけでなく、事故を防ぐための「最低限の津波対策」も指示しておらず「津波対策を先送りにする任務懈怠(けたい)があった」と非難した。
 対策と事故の因果関係については、主要建屋や重要機器室への浸水対策(水密化)工事を講じていれば、津波による事故を避けられた可能性が「十分にあった」と結論づけた。
 訴訟は長期評価の信頼性や巨大津波の到来を予測できたか、東電の安全対策が適切だったか―などが主な争点だった。
 4人が東電が支払う賠償額は、廃炉や被災者への賠償金、除染など東電が負担する費用から算定した。
 旧経営陣のうち、勝俣氏、武黒氏、武藤氏は業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審東京地裁ではいずれも無罪となった。検察官役の指定弁護士が控訴し、控訴審の判決が来年1月に控えている。
 株主側は原発事故の翌年の2012年3月に提訴した。約10年間で62回の審理を重ね、刑事裁判の証拠も多く採用された。昨年10月には原発事故に関連する裁判で初めて裁判官が第一原発の敷地内を視察していた。
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