[2022_06_27_04]原発推進のためには電力危機さえ演出する政府 (下) (了) 東京電力と中部電力間の連系線(※)が脆弱すぎる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年6月27日)
 
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原発推進のためには電力危機さえ演出する政府 (下) (了) 東京電力と中部電力間の連系線(※)が脆弱すぎる 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 3.脆弱すぎる広域連系線

◎ この事態を受けて、岸田首相は「原子力規制委員会の審査についても合理化や効率化を図り、審査体制も強化しながら手続きをしっかり進め、できるだけ可能な原子力発電所は動かしていきたい」などと介入も示唆する発言をし、原発推進派が勢いづく事態になっている。
 また、今回の関係閣僚会議とやらでは、電力逼迫の注意報と警報を使い分けるとか、「電気使用制限令等を含めた準備・検討を進める」(萩生田経済産業大臣)などと、電力危機を煽っている。
 「原発を再稼働しなければ停電しかねない」、「電気を自由に使いたければ再稼働を認めろ」といった強権的、暴力的な主張が政権から出てきた。
 これは大変な事態だ。

◎ しかしこんなことをする必要は全くない。
 日本の電力系統で最も脆弱なのは、東京電力と中部電力(以下、中電)の間だ。東電が50ヘルツ、中部電力が60ヘルツなので、そのまま電気を流すことが出来ない。その間には「周波数変換装置」が必要だ。
 現在、東電と中電の間の連系線は210万kWの能力がある。これを300万kWまで引き上げる計画だが、遅々として進んでいない。
 東日本大震災の直後も、西日本から電気を送ることが出来ていれば、全く問題は無かったし、今後起きるであろう南海トラフ地震の被災を想定すれば、西日本の沿岸火力は全滅状態になるだろうから、東日本から送電することが出来れば大いに復興に資することが出来る。
 しかしこの広域融通体制が、依然として電力事業者による設備投資に任せたままなので、西日本と東日本の連系線が細すぎるままなのだ。

◎ 日本の電力供給体制を大きく変える仕組みを作らないと、このような事態が何度も繰り返される。
 高圧直流送電技術を使えば、2000km以上離れた地点に大電力(1000万kWなど)を効率よく送電できる。北海道から九州まで、直流回線を通して大電力を通せるようにすれば、北海道が逼迫した時に九州の太陽光から大電力を送る、などもできる。
 中小の再生可能エネルギー会社が自由に電力を売ることが出来る体制も確立できる。そうなれば、九州電力の太陽光発電を止める必要もないし、北海道の洋上風力開発が送電網の脆弱さで進まない、ということもなくなる。
 このような仕組みを構築すれば、今の発電所でも十分な設備容量である。極端な悪天候も大規模な地震も、日本列島全部を一度に襲うことはない。

【参考】3月22日の「電気予報」による受給見通し
 需要ピーク時の見通しは「非常に厳しい」の「97%」
 予想最大電力(16時〜17時)
 4,840万kWに対して供給力は 4,963万kW
 使用率ピーク時の見通しは「非常に厳しい」の「97%」
 予想電力(6時〜7時)3,190万kWに対して供給力 3,272万kW
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◎ 見て分かるとおり、5500万とか6000万とか、大きな需要ではないのに逼迫するのは、火力の停止が大きい。
 通常は需要が下がる時期なので検査などで止まっている火力が1000万kWほどあることや、地震により止まっている発電所が400万kWあることが理由だ。
 太陽光発電は日が昇って2時間ほどしないと出力が高くならない。これが大きい。
 夕方の4時台が需要ピークで逼迫するのも太陽光発電が下がるのが理由だ。3月21日の実績では昼台には1300万kWほど出力があるが、天候が悪くなる22日はもっと低く10%程度と見ている。
(初出:2022年6月発行「月刊たんぽぽ舎ニュース」より)

(※)連系線
東京電力と中部電力の間で、東電側が50ヘルツ、中部電力側が60ヘルツなので「周波数変換装置」が必要。
 6/23発信の【TMM:No4514】1.柳田文章では、「地域間連系線」、本日の山崎文章では「広域連系線」と表記していますが、基本的に同じ意味です。
KEY_WORD:電力ひっ迫の注意報_:HIGASHINIHON_:再生エネルギー_: