[2022_06_17_15]判決内容を知った原告たちは…(NHK2022年6月17日)
 
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判決内容を知った原告たちは…

 2022/06/17 20:37 06月17日 20時37分
 【富岡町から避難している原告】
 ことし4月に最高裁判所で開かれた弁論で、3500人あまりいる福島の裁判の原告を代表して法廷に立ち意見陳述した深谷敬子さん(77)は、最高裁判所前に駆けつけ原告団の仲間たちとともに午後2時半からの判決の言い渡しを待ちました。
 判決内容を知った深谷さんは、「がっかりして、体中の力が抜けました。あれだけの原発事故を起こしておいて、とんでもない判決だと思います。帰還困難区域となり自宅に2度と戻れないような状態になってしまったことを裁判官に直接話したのに、届かなかったのでしょうか。泣いても暴れてもどうしようもないのでしょうが、あまりにもショックで気持ちの整理がつきません」と述べました。
 そのうえで、「地獄のような気分です。今までやってきたことは何だったのでしょうか。国の責任を認める判決を期待していた昨夜より、希望を失った今夜の方が眠れないかもしれません」と話していました。

 【「心の判決」望んでいた福島市の原告】
 福島県の集団訴訟の原告の1人で、福島市で果樹園を営む阿部哲也さん(59)は、「信じられません。地裁、高裁と国の責任を認めてきたのに最高裁では認めないという逆転敗訴を、どう理解すればいいのかわかりません」と述べました。
 そのうえで、「あの原発事故はどれだけ対策をしても防げなかったという判断になりますが、誰が原子力発電所の政策を進めてきたのでしょうか。政策を進めた国に事故の責任がないというのは考えがたいです。国の責任を認めさせ、被害実態に沿った救済措置をとってほしいと求めていたので、この結果は途方に暮れるしかありません。除染や風評被害など今も残る被害がなかったことにされるのではないかと思ってしまいます。気持ちの整理がつかず、言葉にならないくらい悔しいです」と話していました。

 【亡くなった原告の遺族】
 福島の集団訴訟では、提訴から9年あまりの間に、100人以上の原告が亡くなりました。
 みずからも原告で、賠償額が確定したことし3月の最高裁の決定の直後にともに裁判を闘ってきた父を病気で亡くした福島市の46歳の男性は、「9年もの時間をかけたのに、肩すかしをくらったような判決で許せません。被害に向き合って書いた判決とは思えず、父がこの判決を知ったら落胆すると思います」と述べました。
 亡くなった父親は、自分から酪農業を受け継いだ息子が、原発事故による風評被害に苦しんでいることに心を痛めて原告団に加わり、生前、「最高裁判決で国と東京電力の責任が両方認められない限り喜べない。私たちが喜ぶような判決になったとしても、すぐ世の中が変わるわけではなく、被害者を救済する法律が作られることが必要なので、最高裁判決は通過点に過ぎない」と語っていたということです。
 男性は、「良い判決でなくても父と一緒に知りたかった。父なら、『残念だ』と言ったとしても、原発事故の被害者の救済を実現するために次はどんな行動をとるべきか考え、周りの人を元気づけたと思うので、自分も次に何ができるのか考えます」と話していました。
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