[2022_05_13_05]「福島県産品を購入しようと思わない」韓国、7割以上が調査に回答。日本の食品検査に不信感?(BUZZFEED_JAPAN2022年5月13日)
 
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「福島県産品を購入しようと思わない」韓国、7割以上が調査に回答。日本の食品検査に不信感?

 「福島県産品を購入しようと思わない」ーー。韓国で7割以上がそのような抵抗感を示していたことが、復興庁の調査でわかった。2023年春頃に東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出を控える中、日本を含む10か国・地域を対象に、復興庁が認識調査を行った。福島県産食品などの輸入規制の撤廃・緩和が各国で進んできたが、水産物の輸入規制を続ける韓国では、まだ根強い不安があることが、改めて浮き彫りになった。【BuzzFeed Japan / 相本啓太】

そもそも「処理水」とは

 政府は2021年4月、福島第一原発で出た「処理水」について、23年春から海洋放出する方針を決めている。処理水とは何か。経済産業省によると、福島第一原発では、原子炉建屋に雨水や地下水が流入したりして、高濃度の放射性物質に汚染された水、いわゆる「汚染水」が発生し続けている。この汚染水を「多核種除去設備(ALPS)」などに通し、放射性物質を取り除く浄化処理をされたものが、「処理水」だ。しかし、水素の仲間である「トリチウム」は技術的に取り除くことが難しく、処理水にも残っている。トリチウムを含む処理水はこれまで、敷地内のタンクに貯められてきたが、貯蔵量の限界が迫っている。このため政府は、処理水を薄めた上で、海に放出することに舵を切った。トリチウムを含む水は、韓国や中国など近隣諸国を含む世界中の原発で、薄められたうえで海や河川に放出されている。福島で処理水を海に放出すること自体は国際的に見ても珍しいことではなく、特別に危険性が高まることも想定されていない。しかし、原発からの処理水が海に流れることに対して、海産物などに風評被害が出ることを懸念し、反対する漁業者らも少なくない。

韓国と他国に大きな開き

 このような現状を受け、復興庁は1〜2月、日本だけでなく、韓国、香港、台湾、シンガポール、アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの20歳以上の男女を対象に、意識調査を行った。調査方法はインターネットで、オーストラリアとニュージーランドは各150人、それ以外の国・地域は各300人の計2700人が回答した。まず、「トリチウムという言葉そのものの認知度」については、日本が37%だったのに対し、他国・地域は3割以下にとどまった。「世界中の原発でトリチウムが海洋や河川などに放出されていることへの認知度」も、日本が29%、韓国が25%、フランスが18%などで、香港と台湾以外は3割を下回った。実際には、韓国でもフランスでも、トリチウムを含む水が海洋などに放出されている。日本も同様に海に流して処分してきた。こうしたトリチウムや海洋放出に関する情報が、そもそも人々に浸透していない実情が垣間見える。
 そして、処理水が海洋放出がされた場合の福島県産品に対する認識についてだ。「仮に海洋放出された後、福島県産食品を購入しようと思わない」。このように回答した人は、韓国が76.0%と最多だった。フランスが45.3%で、香港が41.7%などと続いた。日本は14.7%だった。「仮に海洋放出された後、福島県に観光として訪問しよう思わない」。これも、韓国が最も多く、70.7%だった。フランスが41.3%、香港が40.7%などと続き、日本は14.4%だった。
 韓国が他国と比べて福島県産品への抵抗感が強いのはなぜだろうか。「日本での食品の安全性は、世界でも最も厳しいレベルに設定され、検査を通過した安全な食品が市場に流通していることへの理解」。この設問に対する韓国の回答は、「知っている」が15.3%、「知らない」が28.4%だったのに対し、「知っているが信じていない」が56.3%に上った。「知っているが信じていない」は、他国・地域では20〜30%台だったため、韓国では日本の検査に対する不信感がより強いことがうかがえる。

福島のポップコーンを

 一方、福島県産品の輸入規制を巡っては、各国で撤廃や緩和の動きが進んでいる。農林水産省によると、最近では2020年1月から翌年9月までに、フィリピン、モロッコ、エジプト、レバノン、UAE、イスラエル、シンガポール、アメリカの8か国で規制が撤廃された。報道によると、イギリスのジョンソン首相も今年5月、岸田首相と会談した際に、6月末までに県産食品などの輸入規制を撤廃する方針を伝えている。ジョンソン首相はその際、岸田首相が持参した県産ポップコーンを一緒に味わう様子も報道され、話題になった。原発事故後、最大55か国・地域が福島県産食品の輸入規制を実施したが、現在は41か国・地域が規制を撤廃。福島県の内堀雅雄知事も国内外でトップセールスを展開し、規制撤廃に向けた取り組みを続けている。
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