[2022_05_02_05]いずれ襲ってくる南海トラフ地震 すでに予感させる直下型地震は起きている(島村英紀2022年5月2日)
 
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いずれ襲ってくる南海トラフ地震 すでに予感させる直下型地震は起きている

 「南海トラフ地震」が恐れられている。死者は東日本大震災の10倍を超える予測もある。
 南海トラフ地震が、いずれ襲って来ることは確かだ。地震の元凶「フィリピン海プレート」は年4.5センチメートルで、年々日本列島を押してきている。今年起きなければ来年、来年も起きなければ再来年と、地震のエネルギーは毎年たまっていっているからだ。
 政府の地震調査委員会の確率はシミュレーションの結果である。私もシミュレーションをやったことがあるが、出力を見ながら入力を変えていくのが普通だ。しかも今回のように入力が当てにならなければ確率予想は信用できるものではない。
 南海トラフ地震はフィリピン海プレートが起こすから大地震が繰り返し起きている。だから「先祖」がいる。その先祖は日本人が知る限り13回知られているが日本列島ではもっと前から何百回も起きて来たのだろう。
 一回前は名古屋の沖に起きた東南海地震(1944年。マグニチュード(M)は7.9)と四国の沖に起きた南海地震(1946年、Mは8.0)の二つだった。
 しかし、この二つの地震を合わせても、以前の「先祖」の地震よりは小さい。
 1707年に起きた「宝永(ほうえい)地震」はずっと大きかったことが分かっている。地震の震源は、1940年代の地震と違って駿河湾の中まで入り込んでいた。しかも49日後に富士山が噴火した。この噴火も地震の影響だと思われている。
 このほか。南海トラフ地震の先祖のひとつ、1498年の「明応(めいおう)地震」は大きな港町をまるまる壊滅してしまったほどの大津波を生んだ。襲われた安濃津(あんのつ)は人口も多く、関東に物資を送る拠点だった、いまの県庁所在地、三重県津市だ。
 今度起きる地震がどれほどのものかは分からない。だが、すぐ前の2回を合わせたより大きくなる可能性は否定できないのだ。
 この南海トラフ地震の先祖が起きる数十年前から、西日本で直下型地震が多発する。
 たとえば、すぐ前のときは鳥取地震(1943年、M7.2)、北但馬地震(1925年、M6.8、兵庫県)、北丹後地震(1927年、M7.3、京都府)などが起きて、それぞれ甚大な被害を生んだ。
 今回も、じつは西日本で直下型地震がすでに起きはじめている。淡路島(2013年)。徳島(2021年など)で地震が起きているし、1995年に起きて大きな被害を生んだ阪神大震災(地震名は兵庫県南部地震、M7.3)も、南海トラフ地震が起きれば先駈けに数えられるかもしれない。
 ところで「2038年に起きる」という説がある。それまでは枕を高くして寝てもいい、という安心情報として受け取られかねまい。京都の学者たちが唱えている説だ。その説では高知県・室津港のデータを過去3回使っているが、他のデータはないし、学問的な根拠は薄弱だ。多くの学者は信じていない。
 南海トラフ地震はいつ襲って来るかは現在の学問では分からない。2038年まで待てないかもしれない。いずれ襲って来ることだけは確かなのである。
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