[2022_04_30_02]福島のイノシシ 帰還困難区域内外で放射性セシウム濃度に差(毎日新聞2022年4月30日)
 
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福島のイノシシ 帰還困難区域内外で放射性セシウム濃度に差

 東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域に生息するイノシシの体内の放射性セシウム濃度が、区域外のイノシシと比べて高い値であることが県環境創造センターなどの研究グループの調査で初めて明らかになった。2016年1月から5年間にわたる長期的な調査で、濃度は徐々に減少傾向が見られるという。調査は続いており、研究グループは将来的にイノシシの本格的な駆除再開を通じた住民の生活再建支援につなげたい考えだ。
 調査は国立環境研究所、東京農大と共に実施された。帰還困難区域の内外で、わなにかかったイノシシの筋肉中に含まれていたセシウムを計測した。その結果、21年1月に計測した会津地方と中通り・浜通りの区域外の平均値は基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を下回った半面、区域内の値は約3500ベクレルに達していた。一方、16年1月の区域内の平均値は約8000ベクレルだったことから、減少傾向は見られるという。
 帰還困難区域では、住民らの長期不在中に害獣が増え続け、避難指示が解除された後も生活再建に支障をきたすと懸念されている。センターによると、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後でも、特にイノシシはセシウムが体内に蓄積され、濃度低下が遅いなどと報告されているという。
 県環境創造センターの小田島正・研究部長は「区域外でも、時には高い濃度が検出されるイノシシがいる。今後も調査を継続し、セシウムが減るメカニズムなどを解明したい。そのうえで、捕獲したイノシシの肉が食用となる時期を示せれば、駆除数も増える。古里に戻る人々の生活再建に役立てればと思う」と話す。
 論文は、19日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。【根本太一】
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