[2022_03_10_02]ウクライナの原発は8基が運転中 ハリコフで放射性物質を扱う研究所が攻撃される 核危機を前にIAEAはどうするか 3/8IAEA第14報の紹介 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年3月10日)
 
参照元
ウクライナの原発は8基が運転中 ハリコフで放射性物質を扱う研究所が攻撃される 核危機を前にIAEAはどうするか 3/8IAEA第14報の紹介 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

  
◎ 報道が錯綜し、現地情報も不足しています。
 ウクライナ国内の空間線量を確認できるWebサイトでは、大きな数値の動きは見られません。
 このサイトから東京の800倍を超える数値が確認された時は、大変危険な状態と思いました、現在は数値も落ち着いているようです。
 しかしそれが本当の数値なのか、戦争下で記録計や通信装置が正常に稼働しているのか、あるいは紛争当事国がデータを改ざんしていないか、特にロシア軍に制圧されたチェルノブイリ原発の値やザポリージャ原発周辺からの情報は正しいのかなど、疑問は沢山あります。
 その中で、定期的に情報をアップデートしているのがIAEAのサイトです。

◎ この情報は正しいという主旨ではありません。
 国際的な公的機関として世界で情報を提供しているサイトは重要だという意味で紹介します。
 この原稿は、IAEAの報告第14報を翻訳したものです。
 これが登録されたのは日本時間で3月8日早朝でした。従って時差もありますし、たんぽぽ舎メールマガジン配信の時間差もありますので、その点を留意してご覧下さい。

☆最新情報14−ウクライナ情勢に関するIAEA事務局長声明

 グロッシ事務局長によると、ウクライナ政府は本日(訳注:現地時間3月7日)、国際原子力機関(IAEA)に対して新たに、ハリコフ市にある医療・産業用途の放射性同位元素を製造する原子力研究施設が砲撃によって損傷したとの報告をした。
 ウクライナの原子力規制委員会は、この事件では現場の放射線レベルの上昇は引き起こさなかったと述べた。
 ウクライナ北東部にあるこの施設は、研究開発や放射性同位元素の製造に使用されている。施設内の放射性物質は常に未臨界であり、また放射性物質の保有量は非常に少ないため、IAEAの評価では、施設に報告された損傷は放射線学的影響を及ぼさないことが確認された、と事務局長は述べた。
 しかしながら、日曜日の事件は、武力衝突の際に、ウクライナの原子力施設が直面しているリスクを改めて浮き彫りにし、同国における原子力安全・核セキュリティを確保することを目的としたIAEAの取り組みの緊急性を高めた。
 「ウクライナの核関連施設の安全を危うくする事例がすでにいくつかあった」とグロッシ事務局長は述べた。
 ウクライナ政府によると2月27日、ミサイルが首都キエフの放射性廃棄物処理施設の敷地を直撃したが、放射性物質は放出されなかった。その前日、ハリコフ近くの同様の処分施設の変圧器が損傷した。
 3月4日にはロシア軍がザポリージャ原発の訓練センターを占拠した際、「ザポリージャ原発の訓練センターがロケット弾により攻撃され、火災を引き起こし、その後消火した」とウクライナ政府は発表した。
 これに加えて規制当局は、東部の港湾都市であるマリウポリのがんセンターを含むカテゴリー1〜3の放射線源を使用している企業や機関との連絡は依然として途絶えていると述べた。
 そのため、安否確認ができていない。このような放射性物質は、適切に防護・管理されなければ、人々に深刻な被害をもたらす可能性がある。
 「私たちは、公衆衛生と環境に深刻な結果をもたらす可能性のあるウクライナでの核事故を回避するための行動をとらなければならない。私たちには待つ余裕はない」とグロッシ事務局長は述べた。
 ウクライナの原子力施設の防護を支援するため、紛争当事者からすべてのウクライナ原発の安全とセキュリティへの責務を確保するためにチェルノブイリ原発を訪問する用意があると述べた。
 「私はチェルノブイリに行きたいと言ったが、必要かつ緊急の行動を促進する限り、どこにでも行けます」と彼は本日のIAEA理事会で語った。
 2月24日以来ロシア軍の管理下にある、1986年の事故の現場であるチェルノブイリでは、約210人の技術要員と警備員の交代がまだ行われていないと規制当局は述べた。同じスタッフが12日間現場で働いていた。
 グロッシ事務局長は、重要な任務を安全かつ確実に遂行するために、運転要員が休息できることの重要性を繰り返し強調してきた。
 もう一つの憂慮すべき展開として、ウクライナの規制当局は本日IAEAに対し、ザポリージャ原発に予備部品や医薬品を届けることは今は不可能であると報告した。
 その前日、ザポリージャ原発の管理は、その敷地を支配しているロシア軍司令官の命令を受けていると政府が発表した。ただし発電所の職員は交代することができた、と付け加えた。
 事務局長は、ロシア軍司令官の管轄下に運転要員を置くことは、原子力安全の不可欠な柱に反すると改めて強調した。
 ウクライナの原子力発電所の状況について、規制当局は、ザポリージャ原発の2基を含む同国の15基の原子炉のうち8基が運転中であると述べた。

出典:Update 14 ? IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine
https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-14-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine
※≪事故情報編集部≫より
 この文章は、3月8日受信です。
KEY_WORD:ウクライナ_原発_: