[2022_03_06_01]武力攻撃時の緊急一時避難施設、鹿児島県内に1672カ所 地下避難できるのは1カ所だけ(南日本新聞2022年3月6日)
 
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武力攻撃時の緊急一時避難施設、鹿児島県内に1672カ所 地下避難できるのは1カ所だけ

 ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、日本でも有事の住民保護に関心が集まる。鹿児島県は他国からミサイル攻撃を受けた際の一時避難先となり得る頑丈な「緊急一時避難施設」として1672カ所を指定するが、地下に避難できる建物はかごしま県民交流センター(鹿児島市)1カ所のみだ。全国(5万1994カ所)も地下施設はわずか約2.5%(1278カ所)で、態勢整備が追いついていないのが現状と言える。
 国民保護法は武力攻撃事態が起きた際に住民を避難させ、救援できる施設を都道府県知事にあらかじめ指定するよう義務付ける。国は本年度から5年間を集中取組期間とし、コンクリート造りの丈夫な建物や、地下道、地下街、地下駅舎などを緊急一時避難施設に指定するよう促す。ただ、爆風からの被害軽減効果がより高いとされる地下施設は民間の管理・所有も多く、進んでいない。
 施設数は2021年4月現在で、内閣官房がこのほど公表した。都道府県別では地下施設ゼロが佐賀県、1カ所のみはほかに岩手、島根、徳島の3県。最多は東京都の188カ所で、次いで石川県176カ所、長野県124カ所だった。
 鹿児島県が指定するのは大半が公共施設。危機管理課によると、県民交流センターは地下駐車場部分に避難することを想定する。国の基準で算出すると、一時避難で約1万3000人、中長期では約7200人が収容可能という。新型コロナウイルス対策を考慮するとさらに人数は減る。同課は「県や市町村が定める国民保護計画の実効性を高めるためにも、地下施設を含め自治体と連携し指定を促進したい」という。
 軍事活動を活発化させる中国などを念頭に、国は奄美を含む南西地域の防衛力強化を進める。基地問題に詳しい沖縄国際大学の前泊博盛教授は「ウクライナで最初に攻撃されたのは軍事施設。基地や原発は攻撃を引きつける」と指摘。「一時避難施設や国民保護計画はいざ戦争が起きれば役に立たないだろう。国は軍事衝突が起きないよう外交力を高め、自治体や住民は基地を抱える危険性を十分理解すべきだ」と話した。
 鹿児島大学の平井一臣教授(政治学)は「自治体が作る計画は現実味が薄い。攻撃を受けた際のリスクや具体的な避難行動をシミュレーションした上で住民に示してほしい」と話す。
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