[2022_03_02_06]東海第二事故対策工事の工期延長 地元地方議員 保守系「想定内」野党「廃炉を」(東京新聞2022年3月2日)
 
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東海第二事故対策工事の工期延長 地元地方議員 保守系「想定内」野党「廃炉を」

 日本原子力発電が東海第二原発(東海村)の再稼働に向けた事故対策工事の完了時期を二〇二四年九月まで延期すると発表してから一夜明けた一日、再稼働を求めてきた地元の保守系議員らは静観の構えを見せた一方、野党議員らはあらためて廃炉を求めた。(保坂千裕)
 原電はこれまで工期を今年十二月までとしていたが、格納容器の加圧破損を防ぐ「フィルター付きベント装置」を本体施設とテロ対策施設(特定重大事故等対処施設)で兼用化する工事などのため、一年九カ月後ろ倒しになったという。
 自民党の下路健次郎県議(東海村選挙区)は「どうやっても終わるはずのないスケジュールだった」と、延期は想定内であることを強調。原発の重大事故に備えて村が策定中の広域避難計画について、「実効性は村だけで高められるわけではない。国を入れて議論し、本気になってやってほしい」と注文した。
 一方、再稼働に反対の立場を取る立憲民主党の玉造順一県議(水戸市・城里町選挙区)は、事故対策工事について「再稼働しなければ必要ない」とした上で、原電の財政状況に関しても「工期延長の原因が資金的な問題にないのか検証するべきだ」と指摘した。
 東海村議会の原子力問題調査特別委員会では、東海第二の早期再稼働を求める請願が付託されたまま、たなざらしになっている。保守系会派「新政とうかい」所属の鈴木f(のぼる)委員長は一日、報道陣の取材に「審議未了というわけにはいかない。どちらかに決めて、(選挙の)みそぎを受けるべきだ」と述べ、工事の完了時期に関わらず二四年一月の任期満了前には議会として意思表示するべきだとの考えをあらためて示した。
 共産党の大名美恵子村議は「大幅な、思い切った延長だ」と驚いた様子。工期の延長で、村を含む六市村長による再稼働の是非の判断も先送りされることになり、「首長たちが(再稼働は)無理だなと思うような世論形成をしていきたい」と力を込めた。

◆ガラス固化6月再開 東海再処理施設

 日本原子力研究開発機構は、廃止措置中の東海再処理施設(東海村)で、高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて固める作業を六月に再開する。二月二十八日に開かれた原子力規制委員会の東海再処理施設安全監視チームの会合で、機構側が説明した。ガラス固化は、ガラス溶融炉のトラブルで二〇二一年十月から中断しあている。
 機構は二一年八月、約二年ぶりにガラス固化を再開したが、溶融炉底部の出口付近に固まったガラスが想定より早く堆積したため中断。十二月に遠隔操作でガラスを削り取る作業を始めた。計画通り進んでおり、二月二十二日時点で約43%に当たる一五・五キロの除去を終えたという。
 機構は二八年度までに全ての廃液を固化処理し、計九百本程度のガラス固化体を製造する計画だが、製造済みは三百二十九本にとどまる。ただ、今回の遅れによる計画の見直しはしない方針で、二二年度は最大六十本を製造するとしている。
 施設内に大量に残されている高レベル廃液は極めて放射能が高い。リスク低減のため、規制委は早急にガラス固化を終えるよう機構に求めているが、一六年一月の作業開始以降、四回にわたり中断。六年間あまりのうち、停止期間は五年四カ月に及ぶ。(宮尾幹成)
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