[2021_12_09_03]原子力施設誘致、具体性乏しく 巨額税収への思惑透ける 青森・風間浦村(河北新報2021年12月9日)
 
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原子力施設誘致、具体性乏しく 巨額税収への思惑透ける 青森・風間浦村

 青森県風間浦村が原子力施設の誘致に向けた検討に着手するのは、立地自治体が受け取れる交付金や税収など巨額の財源を見込んでいるからだ。ただ村に誘致できる施設は限定的とみられ、構想は具体性に乏しいとみる向きもある。
 2020年国勢調査(確定値)によると、村人口は15年の前回調査より17・2%減り、県内市町村で最大の減少率だった。高齢化率も46・3%と6番目に高く、将来的に税収減が避けられない中、原子力施設誘致によって財源を捻出したいとの思惑が透ける。
 村の西隣で、電源開発が大間原発を建設中の大間町には21年度までに、電源立地地域対策交付金37億8400万円が配分され、学校や病院といった公共施設の維持管理に使われた。28年度ごろとされる運転開始時に交付金は打ち切られるが、その後は施設の固定資産税を見込める。
 村の東側に位置するむつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設は、事業開始から5年間で核燃料税だけで約94億円の税収を見込んでいる。
 原子力施設が集積する下北半島にありながら、立地自治体の「隣接」に甘んじていた風間浦村だが、誘致への道のりは曲折も予想される。10月に閣議決定されたエネルギー基本計画では原発の新増設に踏み込まないなど、環境が整っているとは言い難い。
 県によると、村議会での答弁内容として6日に村から「広く情報収集する」と連絡があった。三村申吾知事は8日の定例記者会見で「情報収集の段階では(誘致という)仮の話についてコメントすることはない」と述べた。
 ある県幹部は「村の大半は山間部で、沿岸には開けた平地が少ない。原子力施設を建設できるような適地があると思えない」と首をかしげた。

 ■「若者が働ける場所に」■「今更原子力なのか」

 青森県風間浦村が原子力関連施設の誘致を検討することが明らかになった8日、村内では誘致実現による税収増や雇用増を期待する声が上がる一方、重大事故の危険性や風評被害を懸念し、反発や戸惑いも広がった。
 村役場に近い易国間漁港。「大間原発には俺たちも同意したのに、潤っているのは大間町だけ。村の人口は減る一方だ。若者が働ける場所ができるのなら、村は良くなるはずだ」。定置網の水揚げ作業をしていた男性(62)は誘致を歓迎した。
 庭の手入れをしていた主婦(80)も「村役場の高台移転は急ぐべきだし、豪雨災害からの復旧も遅れている。苦しい財政状況では、原子力に頼るしかない。建設地が村民の農地や山林であれば、喜んで土地を売る人もいるだろう」と肯定的だった。
 東京電力福島第1原発事故の除染作業員として出稼ぎ経験がある松原弘幸さん(67)は誘致に反対の立場。「故郷に帰れない人たちの悲しさを福島で目の当たりにした。生まれ育った村で同じような事故が起こってしまうのは絶対に避けたい」と語気を強めた。
 下風呂温泉郷にある食料品店で働く女性(49)は「大間町と(中間貯蔵施設がある)むつ市に挟まれ、村民には原子力施設への抵抗感が少ないかもしれない」と話しつつ「脱原発の時代に今更原子力はどうなのかな、と個人的には思う」と語った。
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