[2021_12_08_09]風間浦村長、原子力施設誘致構想を表明 災害復旧の財源に 最終処分場は除外(東奥日報2021年12月8日)
 
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風間浦村長、原子力施設誘致構想を表明 災害復旧の財源に 最終処分場は除外

 青森県風間浦村に原子力関連施設を含む企業誘致構想があることが7日分かった。冨岡宏村長が同日の定例村議会一般質問で、誘致検討に向け調査を進めると表明した。施設の具体名には言及しなかった。村は誘致で得られる交付金や税収を災害復旧、役場庁舎移転などの財源に充てる考え。ただ、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の誘致は検討から除外するとした。
 原子力関連施設誘致の必要性を訴えた北舘智明議員の質問に答えた。冨岡村長は今夏の豪雨災害の復旧遅れや避難道の未整備などに対する不満を示したほか、高台移転を検討する役場、消防庁舎等の整備に経費がかさむとの厳しい財政見通しを説明。「(原子力関連施設誘致を)全く否定するものではない。再生可能エネルギー施設をはじめ誘致可能な企業など、広く情報収集、勉強から始める。可能性があるものは調査検討につなげていく」と強調した。
 「(既に原子力施設が立地している)大間町、むつ市、東通村、六ケ所村にわれわれの行動が影響を与えることはあってはならない」とも付け加え、慎重に検討していく意向を示した。
 冨岡村長は施設の具体名には触れなかったものの、立地自治体などに交付される電源立地地域対策交付金の対象となる原子力関連施設として、原発、使用済み核燃料貯蔵施設、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料加工施設、放射能レベルが比較的高い廃棄物の埋設施設、深地層研究施設、特定放射性廃棄物の最終処分施設等を例示。その上で「原発の再稼働が進まない中で、新たな原発はもちろん、燃料加工施設、使用済み核燃料貯蔵施設は現状では必要に迫られていない」と、これらの施設は誘致困難との認識も示した。
 交付金対象施設のうち、国や電力会社が具体的に候補地を募集している施設は高レベル放射性廃棄物の最終処分場のみだが、国が示した科学的特性マップでは同村は適地とされていない。冨岡村長は「知事も本県を最終処分地としないことを、担当大臣が代わるたびに確認している」として誘致対象から除外することを明言した。
 冨岡村長は議会散会後の取材に、県や周辺市町村に対し、原子力関連施設の誘致を視野に検討していく意向を既に伝えたことを明らかにした。

 ▼長期的な財源確保へ/「立地自治体と雲泥の差」

 7日、風間浦村の冨岡宏村長が原子力関連施設も含めた企業誘致検討を表明した背景には、8月に発生した大雨災害からの復旧が進まない現状と、津波浸水想定区域に立つ役場庁舎の新築・移転を急ぎたい考えがある。「原子力関連施設の立地自治体と隣接自治体では、補助金などで財源に雲泥の差があることを知ってほしい」。冨岡村長は長期的な財源確保を見据えた一手を打った。
 冨岡村長は村職員時代、財政担当などとして全国の原発を視察。隣接自治体の職員から「『立地』になっても『隣接』にはなるな」と、財源の格差を訴える地元の声を多く聞いたという。
 役場庁舎移転へ多額の費用が必要となる中、突然襲った大雨災害。冨岡村長は取材に対し「災害に備えるためにも財源の確保は急務。再生可能エネルギーや原子力関連施設など幅広く情報収集を進めたい」と述べた。
 村民には、原子力関連施設の誘致が地域活性化につながるなら−と理解を示す声がある一方、安全性を懸念する声も上がった。
 「村は十分な財源がないのが現状。施設誘致で少しでも地域活性化にお金を使えるのであれば選択肢の一つになってもいいのでは。若者は地元に残りたくても働き口がない。その若者の受け皿にもなる」と話すのは60代漁業男性。原子力関連施設が立地するむつ市と大間町に挟まれていることを挙げ、「隣にあってもうちの村にあっても有事の際に被害を受けるのは同じ。生活圏も同じだから」と冷静に受け止める。
 一方、子育て中の40代女性は「誘致のおかげで道路が早く完成したり、新たな雇用が生まれるかもしれないが、今必要な施設なのか。安全性を考えると手放しで『おいで』とは言えない」と語った。
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