[2021_12_03_13]社説(12/3):米軍機タンク投棄/原因究明し再発防止徹底を(河北新報2021年12月3日)
 
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社説(12/3):米軍機タンク投棄/原因究明し再発防止徹底を

 一歩間違えれば、大惨事になっていた。
 米軍三沢基地(三沢市)所属のF16戦闘機が先月30日、青森県上空で投棄した燃料タンク2個のうち1個が落下した場所は、同県深浦町の住宅街から数十メートルしか離れていなかった。付近の住民は、ドーンという音とともに「竜巻のように家が揺れた」と衝撃の大きさを語っている。
 F16戦闘機は事故やトラブルを繰り返してきた。過去の教訓はなぜ生かされなかったのか。米軍は事態を深刻に受け止め、原因究明と再発防止に全力を挙げるべきだ。さもないと、県民の不安は解消されない。
 三沢基地のティモシー・マーフィー副司令官から1日に説明を受けた三沢市によると、F16戦闘機は訓練に向かう途中、エンジンの油圧が下がる警告が表示され、機体を軽くするために燃料タンクを投棄した。パイロットは安全な場所に投棄するとしたマニュアルに従ったと説明しているという。米軍は当初、「非居住地域に投棄した」と発表していた。
 燃料タンク1個当たりの容量は約1400リットル。燃料の残量は分かっていない。F16戦闘機はその後、青森空港に緊急着陸した。
 同基地のF16戦闘機は2018年2月、離陸直後にエンジン火災を起こし、小川原湖(同県東北町)に燃料タンクを投棄した。このときも落下地点から100〜200メートルしか離れていない所でシジミ漁の漁船が操業していた。エンジンの出火は部品交換の際の人為的なミスが原因だった。
 米軍機を巡っては、横田基地(東京都)の輸送機オスプレイが6月に山形空港、9月には仙台空港にいずれも緊急着陸。先月23日には、沖縄県宜野湾市内の住宅敷地に、普天間飛行場(宜野湾市)のオスプレイが水筒を落下させ、日本政府は米側に再発防止を求めたばかりだった。
 今回の問題では、日米地位協定がまたもや壁となった。
 地位協定の特例法により、日本の航空法は米軍機に適用されない。住民らが危険性を訴えても、米軍の飛行を止める手段はなく、事故やトラブルがなくならない背景とされてきた。
 F16戦闘機は青森空港に緊急着陸後、滑走路に8時間近くとどまったが、日本側は機体に触れることができなかった。タンクの残骸も米軍が回収しており、警察による捜査は難しい。日本側は米軍による原因究明を求めることしかできず、検証の難しさが改めて浮き彫りになった。
 米中関係が緊迫化する中、米軍の太平洋重視の戦略は日本の基地なしには成り立たない。にもかかわらず、安全軽視と受け取られかねない問題が起きた。米軍は、駐留には地元の理解と協力が不可欠であり、そのためには安全確保が大前提であることを改めて肝に銘じるべきだろう。
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