[2021_12_01_19]青森空港 民間機は通常運航 防衛省“タンク投棄”確認進める (NHK2021年12月1日)
 
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青森空港 民間機は通常運航 防衛省“タンク投棄”確認進める

 11月30日、青森市の青森空港に緊急着陸したアメリカ軍の戦闘機は、12月1日未明滑走路から駐機場に移動し、青森空港を発着する民間機は1日は通常どおり運航しています。一方、アメリカ軍は戦闘機が飛行中に緊急事態に陥り人が住んでいない地域に燃料タンク2個を投棄したと発表し、防衛省が確認を進めています。
 青森県によりますと、30日午後6時12分ごろ青森市の青森空港にアメリカ軍三沢基地に所属するF16戦闘機1機が緊急着陸しました。
 この影響で青森空港は民間機の発着ができず、30日、東京や大阪などを結ぶ民間機合わせて7便が欠航したり出発地に引き返したりする影響が出ました。
 県によりますと、戦闘機は1日午前1時すぎ、滑走路から駐機場に移動し、その後、滑走路に異常がないことが確認されたため青森空港を発着する民間機は1日は通常どおり運航しています。
 一方、アメリカ軍は「F16戦闘機が飛行中に緊急事態に陥り、岩木山近くの人が住んでいない地域に燃料タンク2個を投棄した」と昨夜、発表しました。
 パイロットを含む人的な被害は確認されていないとしています。
 警察によりますと、青森空港から南西におよそ65キロ離れた深浦町役場近くの国道101号では、30日午後6時ごろ金属製の物体が見つかり、防衛省は燃料タンクの一部の可能性があるとみて、現場に職員を派遣するなどして詳しい状況の確認を進めています。
 現場の国道は車の通行量が多く、周辺には住宅などが建ち並んでいます。

 三村知事「米軍と防衛省に厳重に抗議する」

 青森空港に緊急着陸したアメリカ軍の戦闘機が緊急事態に陥り燃料タンクを投棄したことについて、青森県の三村知事は「大変に遺憾なことでありアメリカ軍に対しても、防衛省に対しても厳重に抗議しようと思っている。詳しいことを聞いてから行動を起こしたい」と話していました。

 松野官房長官「米軍に遺憾の意伝える」

 松野官房長官は午前の記者会見で、「現時点で人的被害は確認されていない。投棄した燃料タンク2個のうち1個は深浦町役場の道路で発見され、もう1個の落下場所は現時点で確認はされていないが岩木山近傍に落下したもようだ」と述べました。
 そのうえで、「このような事案の発生は、地元の方々に大きな不安を与えるあってはならないものだ。政府として、速やかに関係自治体に情報提供を行うとともに職員を深浦町と青森空港に派遣し、関係機関と連携のうえ、情報収集を行っている。鬼木防衛副大臣がきょう現地を訪問し、青森県知事と深浦町長に対し説明を行う。このような事案が再び起こることがないよう日米で連携して安全管理の徹底を図っていく」と述べました。
 そして、「アメリカ軍に対しては遺憾の意を伝えるとともに、青森空港にあるF16戦闘機の早期移動や燃料タンクを回収するなどの対応を速やかに取ること、安全管理の徹底、原因究明、実効性のある再発防止、情報提供などについて強く申し入れた。新たな情報が得られ次第、速やかに関係自治体などに提供するなど適切に対応したい」と述べました。

 防衛省 東北防衛局長が陳謝

 防衛省東北防衛局の局長が1日午前、燃料タンクの一部が見つかった青森県深浦町で会見を開き、「住民の方に不安な思いをさせてしまったことにおわびを申し上げたい」と述べて陳謝しました。
 防衛省東北防衛局の市川道夫局長は、1日午前8時ごろ深浦町役場に吉田満町長を訪ね、これまでの経緯を非公開で説明しました。
 このあと2人は共同で会見を開き、市川局長は深浦町役場近くで見つかった燃料タンクの一部について、「アメリカ軍のF16戦闘機が投棄したタンク2つのうちの1つとみられる。住民の方に不安な思いをさせてしまったことにおわびを申し上げたい」と述べ陳謝しました。
 東北防衛局によりますと、投棄した燃料タンクは、戦闘機の両側の翼の下に取り付けていたもので、2つで合わせて最大370ガロンの燃料が入っていたと、アメリカ軍側から説明があったということです。
 もう1つの燃料タンクについては、落下地点の確認がとれていないということで、アメリカ軍と捜索に向けて調整しているということです。
 一方、吉田町長は、「率直に申し上げて、非常に驚いている。危険なのでアメリカ軍側には、安全管理を徹底してほしいときつく申し上げたい」と述べました。

 燃料タンク投棄の目的は

 戦闘機を含む航空機は飛行時間を延ばすため、もともと搭載されているものとは別に、左右の主翼や胴体の下に燃料タンクを取り付けることがあります。
 このタンクは、パイロットの操作で切り離せるようになっていて、緊急着陸の際、重量オーバーによる滑走路のオーバーランを防ぐ時や、戦闘状態になるなどして、より機敏に動く必要に迫られた場合などに、機体を軽くする目的で切り離されます。
 また墜落や胴体着陸する際に、燃料タンクに引火して被害が拡大するのを防ぐため切り離されることもあります。

 燃料タンク投棄のルールは

 戦闘機の燃料タンクの投棄について、アメリカ軍がどのようなルールを定めているかはわかっていません。
 一方、航空自衛隊の場合、操縦マニュアルにある「緊急手順」で定められています。
 この中で、燃料タンクを投棄する具体的なケースとして定められているのは、離陸に向けて滑走路を走行している際に、エンジンに大きなトラブルが起きた場合です。
 これ以外にも、離陸直後、高度や速度が十分に確保できていない場合などに、墜落などの重大な事故を防ぐため、パイロットの判断で行われることがあるということです。
 航空自衛隊によりますと、燃料タンクを投棄する際、パイロットは民間に被害が及ばない場所を探すということで、今回アメリカ軍は、「飛行中に緊急事態に陥り、岩木山近くの人が住んでいない地域に投棄した」と発表しました。
 しかし、投棄された燃料タンクの一部が、住宅近くで見つかっていて、当時、戦闘機がどのような状況に陥り、パイロットがどう判断してタンクを投棄したのかが焦点になります。

 利用客「ホテル代など余分な出費かかった」

 アメリカ軍の戦闘機が緊急着陸し、30日、民間機が欠航するなどの影響が出た青森空港では1日、早朝から運航を待つ多くの利用客の姿が見られました。
 このうち、30日午後7時前の便で県営名古屋空港に向かう予定だったという名古屋市の50代の女性は、「アメリカ軍の戦闘機が着陸したと聞いたときはびっくりしました。急きょ欠航になったので夜遅くにホテルを予約して、きょうの始発で帰ることになり、ホテル代や交通費など余分な出費がかかりました」と話していました。

 米軍機の投棄・落下トラブル

 飛行中のアメリカ軍機から部品が落下したり、燃料タンクが投棄されたりするトラブルは、これまでもたびたび起きています。
 3年前には、三沢基地に所属するF16戦闘機で離陸直後にエンジン火災が起き、2つの燃料タンクが基地近くの小川原湖に投棄されました。
 この湖は、特産のシジミなどの漁が盛んですが、水質の悪化が懸念されたことからおよそ1か月にわたって漁ができなくなりました。
 三沢基地のF16戦闘機はこのほかにも、おととし1月、八甲田山系の上空を飛行中に操縦席を覆うプラスチック製の部品の一部を落下させたほか、同じ年の11月には、六ヶ所村の民有地に重さおよそ230キロの模擬弾を落下させました。
 また、アメリカ軍の基地が集中する沖縄でも、部品などの落下は相次いでいます。
 4年前には、普天間基地に所属するヘリコプターが、隣接する小学校の校庭に重さ8キロの窓を落下させました。
 このとき校庭では体育の授業が行われていて、窓が落ちたのは子どもたちから10メートルほどの場所でした。
 また、11月23日には、宜野湾市の住宅の敷地内に普天間基地を離陸した輸送機オスプレイからステンレス製の水筒が落下しました。
 この問題では30日、宜野湾市議会がアメリカ軍への抗議決議を全会一致で可決しました。
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