[2021_11_17_07]中越沖地震で折損した基礎杭をそのまま使う? Sクラス施設がM6.8(中越沖地震)で破壊された柏崎刈羽原発6号機の耐震性欠陥が明らかに 耐震性能を失った状態にあるから再稼働どころの話ではない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年11月17日)
 
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中越沖地震で折損した基礎杭をそのまま使う? Sクラス施設がM6.8(中越沖地震)で破壊された柏崎刈羽原発6号機の耐震性欠陥が明らかに 耐震性能を失った状態にあるから再稼働どころの話ではない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 11/15発信【TMM:No4343】「★1.東電柏崎刈羽原発の基礎杭が折損していた」の続きです。
◎ 柏崎刈羽原発6号機建屋の地下の基礎杭で損傷が見つかり、原子力規制委員会は11月10日の定例会合で、中越沖地震の影響でくい内部の鉄筋が破断し、変形したとの見方を示した。
 会合で更田豊志委員長と事務局との会話では、この基礎杭は、新規制基準適合性審査でSクラスに「格上げ」されたもので、以前は「ノンクラス」だった。
 そのため耐震設計も十分ではなかったのではないかという。
 しかしこの論理はおかしい。
 大物搬入口は、外形上原子炉建屋に接続しており、いわば一体のものと見える。
 原子炉建屋はもちろんSクラスで、その原子炉建屋に直結する大物搬入口の基礎部分がノンクラスとはにわかに信じがたいクラス分けだった。
 大物搬入口が倒壊したら、原子炉建屋にも影響がある。運転時は閉鎖されているとしても、密封性能に影響を与えるだろうし、過酷事故が起きたら放射性物質の遮蔽・密封性能に支障を来す。
 新規制基準では、大物搬入口の基礎部分もSクラスとされた。
 そのため、耐震性能の向上が必要になり、7号機に続き6号機でも耐震強化の一環として液状化対策工事を行うことになり、3月から始まっていた。その工事中に破損が見つかったとされる。

◎大物搬入口の基礎部分の破損

 大物搬入口は従来のクラス分けではSクラスに分類されていなかったものの、中越沖地震後に何らかの検査対象になった形跡はない。
 その理由は外観上も機能上も変化が見られていないからとされる。
 柏崎刈羽原発では、中越沖地震で随所に液状化が発生し、大きな問題を起こした。そのため、特にSクラスとなった大物搬入建屋は耐震強化工事のため液状化対策工事をすることになった。
 3月10日に工事は始まったが、7月9日に建屋下の掘削をしたところ、「No8杭の一部の部位に損傷があることを確認した。」そして8月5日に「その後の調査で主筋18本中、7本が破断、11本が変形していたことが8月5日に判明した。」(東電報告書より)
 鉄筋入りの基礎杭は全部で18本。そのうちもっとも外側の一本が破損していた。
 のこりの基礎杭にもコンクリートの剥落やひび割れがみつかったが、破損には至っていないとされている。
 ただし、杭の頭部の非破壊検査と外観検査をしただけで、深さ12mの全体を調べたわけではない。

◎現状はどうなっているのか

 8月5日に杭の破断を確認した後、更に破損するのを防ぐためとして破損箇所モルタルで埋められた。
 これを「仮復旧」としているが、鉄筋8本は断裂したままなので、ただ乗っているに等しい強度しかないと思われる。
 残りの17本の杭の鉄筋は「健全」とされているので、大物搬入口は「直ちに破損することはない」と評価している。
 しかしながらこの判断は甘すぎる。
 中越沖地震はマグニチュード6.8の地震である。
 基準地震動として現在求められる耐震性とはかけ離れた強さであり、基準地震動を想定した計算を行えば、国(とて?)も建屋も維持できないことは明白だ。
 現段階では、大物搬入口の基礎部分に求められる基準はSクラス、即ち基準地震動の揺れにも十分耐えられなければならず、仮復旧で元の強度と同程度では失格なのだ。
 柏崎刈羽原発6号機は現在、耐震性能を失った状態にあるから、再稼働どころの話ではなくなっている。

◎水平展開はされるのか

 もともとノンクラスだったものがSクラスに「格上げ」されることは、更田委員長によると「希なこと」だという。
 しかしながら現実に起きているのだから、そうした構築物、系統、機器があるのかないのか、全部総ざらえして見直す必要がある。
 さらに、7号機のこの部分の液状化対策工事は終わっていることになっている。
 同じ場所に損傷がなかったことを確認していたのか、または今後確認するのか、重要な点だ。
 このような杭構造の工作物は他にもいくつもある。これらについて強度上の問題が無いのか、点検しなければならない。
 6号機8番杭が破損した原因もはっきりしていない段階では、どのような応力が係ったかも解明していないから、これについても分析が必要だ。
 柏崎刈羽原発は地盤が悪い。中越沖地震で液状化が多発し、原子炉建屋などの周辺の地盤が液状化で陥没さえしている。
 では、原子炉建屋は大丈夫なのか。以前からこの点が大きな問題になってきた。この疑問に対しても答えなければならない。

◎大物搬入口の基礎部分が破損したら

 大物搬入口は通常運転時は閉鎖されるが、地震で倒壊した場合、原子炉建屋との接続部分が破損し、密封構造が破壊される可能性がある。
 また、重大事故時には大物搬入口から様々な防災資機材を搬入するだろうし、人の出入りも必要になる。また、避難路にもなり得るだろう。
 そういう設備の破損はもちろん想定外であり、容認できない。
 災害時において想定されない危険が改めて又一つ明らかになった事件でもある。
 耐震設計の重要度分類(クラス分け)は、S、B、Cクラスの3つに分類されている。
 そのうち最大強度を求められる構築物、系統、機器の設計は「Sクラス」とされ、基準地震動に相当する地震でも放射性物質の密封性能に支障を来さないことを要求している。
 Bクラスは基準地震動の概ね半分に相当する設計用地震動Sdにおいて破損しないこと、Cクラスでは通常の建築物同様の耐震性を要求している。
 ノンクラスという分類は存在せず、いわば耐震評価対象外という位置づけになる。
KEY_WORD:柏崎_くい破損_:CHUETSUOKI_:KASHIWA_: