[2021_11_15_05]東電柏崎刈羽原発の基礎杭が折損していた 中越沖地震から14年後に見つかる損傷 東京電力は調査もせず放置してきた 規制庁の「東電の都合」を許す姿勢は依然として変わっていない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年11月15日)
 
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東電柏崎刈羽原発の基礎杭が折損していた 中越沖地震から14年後に見つかる損傷 東京電力は調査もせず放置してきた 規制庁の「東電の都合」を許す姿勢は依然として変わっていない 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 ◎はじめに
 柏崎刈羽原発6号機の大物搬入口で、基礎杭8本の内1本が地中で破損していたことが明らかになった。
 このことは、新規制基準適合性審査を通っている原発の「耐震Sクラス」の設備で発生していたことで、極めて重大な欠陥である。
 中越沖地震から14年後も経て、新たな損傷部分が基礎杭でみつかるなど、どこまで安全軽視の原発か、驚くべき実態だ。
 そしてここにも「都合の悪いことは出来るだけ小さく、たいしたことはないかのように広報する」との、東電体質が現れている。
 まずこの点から、指摘したい。

◎ 規制委員会の会合で初めて世間に伝わる

 11月10日の規制委定例会で事務局から規制委員に対して説明があったことから、各社一斉に報じた。
 しかし東電はこの事実を7月中にはつかんでいた。
 東電が規制庁に提出した文書によると、確認した日は7月9日。
 6号機原子炉建屋の東側に位置する大物搬入口の基礎部分を掘削していた際に、一番外側に位置する8番杭のコンクリートが破損し、割れや剥落、浮き上がりを確認したという。
 この段階で実態が明らかになっていたならば、損傷部位の調査に規制庁や県なども入ることが出来たろうし、選挙においても議論になっていただろう。
 選挙対策もあってか、この事実は隠されていた。

◎ 不自然な公表経緯

 この確認日付には疑問も残る。
 杭の掘削を開始したのは3月10日。確認の4ヶ月も前である。
 この間、破損に気づかなかったというのは不自然だ。
 6月29日には株主総会があったので、これより前に報道発表があれば当然総会で大きく取り上げられる。それを回避するため、敢えて確認日を総会後にしたのではないか。破損が分かっても確認行為をしなければ良いわけだから。
 実際、7月9日に確認された破損も、規制委の会合で取り上げられたのは11月10日だ。ここでも4ヶ月後。3月、7月、11月と破損情報の推移には不自然な「4ヶ月毎の時期のずれ」がある。

 実は、7月には別に大きなイベントがあった。
 7月13日、規制庁は東電本店への立ち入り検査を行っている。
 これは、ID不正や侵入防止装置の破損放置問題に関連した不祥事に対する立ち入り検査だが、このタイミングで杭の損傷が明らかになれば、さらに東電への批判が高まると考え、この段階では「調査中」を口実に情報を伏せた。
 なお、杭については「コンクリートの浮き・剥離」として8月の柏崎刈羽原発所長定例会見では会見資料に載せてはいるが、損傷部を修復したとの記載。そのため重要性は全くわからず、報道もされていない。ウソの情報を広報していたのである。
 実際に、工事の進み方も不自然な行為が見られる。

 7月9日には破損を確認した段階で掘削を中断したが、これが7月27日になって8番杭の調査が再開されている。
 この間に規制委の立ち入り調査があったのだが、その間に破損箇所は手つかず。
 実はこの段階では外観上は明確に損傷しているようには見えない。
 つまり隠せたのだ。

◎ 規制庁調査の進展の遅さも大問題

 8月5日以降には再開した調査の際に、破壊されたコンクリートをはつり取り、壊れた部分をむき出しにして調査し、鉄筋の破断などを確認している。
 しかし規制庁に報告されたのは11月2日になってから。確認から8ヶ月が経っていた。現地の運転検査官には、この直前に報告されていたという。

 この段階で、ようやく規制庁が動き出し、11月10日の会合へと繋がる。
 実に確認から8ヶ月、東電以外に実態を把握しないまま、現場の損傷杭は「保存」の名目でモルタルで覆い隠されており、規制庁が調べようにも見えない状態になっている。
 現場を確認できるのは、どういうわけか来年2月以降になるという。
 このように現場をいじってしまい、損傷部位を確認させないこともまた、東電体質として批判されてきたことではないのか。
 規制庁の「東電の都合」を許す姿勢は依然として変わっていない。
 引き続き、破損した杭の意味などを次回は考えてみる。
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