[2021_11_02_01]地震予測の信頼性、民事でも判断割れる 東電強制起訴控訴審(毎日新聞2021年11月2日)
 
参照元
地震予測の信頼性、民事でも判断割れる 東電強制起訴控訴審

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、1審で無罪判決を受けた東電の勝俣恒久元会長(81)ら旧経営陣3人の控訴審第1回公判が2日、東京高裁(細田啓介裁判長)であった。
   ◇
 東電旧経営陣の公判は、控訴審でも地震予測「長期評価」の信頼性を巡り、指定弁護士と弁護側が全面対立する展開となった。一方、原発事故の避難者らが東電と国の責任を追及した民事裁判ではこれまでに4件の高裁判決が出され、長期評価の信頼性を巡って判断が割れている。
 長期評価は、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いで、マグニチュード8・2前後の津波地震が30年以内に20%程度の確率で起こるという内容。2020年9月の仙台高裁判決は、長期評価は国の機関が公表したもので、専門家の論文とは性格や意義が異なるとし、東電は津波の到来を予見できたとした。今年2月の東京高裁判決、同9月の高松高裁判決も長期評価の信頼性を認めた。3件の判決はいずれも、国も東電に対策を求めることができたなどとし、国の賠償責任も認めた。
 一方、別の訴訟の今年1月の東京高裁判決は、長期評価には異論を唱える専門家もいたとし、国は巨大津波の予見はできなかったと正反対の認定をした。
 東海大の池田良彦名誉教授(刑事過失論)は「個人に刑事罰を科するかどうかを決める刑事裁判は、危険性が切迫している認識があったことについて、より高度の立証が求められる」とし、民事裁判よりも東電の過失を認めるハードルは高いと指摘。控訴審について「漠然とした危険性の不安では原発を停止するほどの義務は生じない。長期評価が現実に大津波を予見できたと言える内容かどうかが最大のポイントになる」とみる。【遠山和宏】

KEY_WORD:FUKU1_:TSUNAMI_: