[2021_10_30_01]住宅より揺れに弱い原発 脱炭素を掲げて原発が推進されています しかし、原発は耐震性が住宅より低く 大地震が起きると大事故が起きます 小若順一(食品と暮らしの安全基金)(たんぽぽ舎2021年10月30日)
 
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住宅より揺れに弱い原発 脱炭素を掲げて原発が推進されています しかし、原発は耐震性が住宅より低く 大地震が起きると大事故が起きます 小若順一(食品と暮らしの安全基金)

 三井ホーム 5,115ガル
 川内原発  620ガル
 玄海原発  620ガル
 もっとも安全性が求められる原発の耐震性は、住宅の2分の1から8分の1以下でした。
 三井ホームの市販住宅は5,115ガルに耐えられるのに、九州電力の川内原発と玄海原発の耐震性は620ガルしかありません。
 ガルは地震の揺れの強さを表す単位で、数値が小さい原発は耐震性が低いのです。
 電力会社は「原発は直接固い岩盤に建屋を建てているため、施設の揺れの増幅も考慮して、ハウスメーカーの値と単純に比較することはできない」と反論しています。
 しかし、1ガルは毎秒1cmの割合で速度が増すことを示す、地震観測では震度以上に客観的な数値です。
 原発の耐震性が、住宅より大きく劣っているのは、まぎれもない事実です。
 大事故が起これば、その地域だけでなく、日本全土が壊滅しかねないのに、原発の耐震性が、どうして放置されているのでしょうか。

住宅より揺れに弱い原発
倒壊しなかった一般住宅

 東京電力は否定していますが、東日本大震災で破損した福島第一原発の、非常用発電機系統や緊急炉心冷却装置は、津波に襲われる前の震度6の地震で、すでに破損していたと言われています。
 震度とガルの関係は、震度7が1,500ガル以上、震度6強が830から1,500ガル、震度6弱が520から830ガルです。
 福島第一原発の耐震性(基準地震動)は600ガルでしたので、震度6で装置や機器の一部が破損されていて当然なのです。
 同じ震度6の地震に襲われたにも関わらず、福島の住宅はほとんど倒壊しませんでした。
 一般住宅は建築基準法で震度6から7の地震に耐えられる建築が義務付けられているので、これも当然です。

住宅は無事・原発はアウト

 原発の耐震性は、最高でも1,209ガルなので、1,300ガルの地震が襲った場合、まわりの一般の住宅は無事なのに、原発は施設が破損され、福島第一原発と同様の原発事故が起きることになります。
 敷地内のすべての施設が頑強に建設されている原発建屋が、木造の一般住宅よりも耐震性が低いことは考えられないと思われるかもしれません。
 しかし、原発と住宅とでは耐震性の概念がまったく違います。
 住宅は、建物が倒壊せず、中にいる人々の命が守られれば、停電しようが、水道が止まろうが、問題はなく、建物が倒壊するかどうかが耐震性の基準です。
 それに対して原発は、東電福島第一の原発事故で明らかになったように、
 1.「止める」(核分裂反応の停止)
 2.「冷やす」(ウラン燃料の冷却)
 3.「閉じ込める」(放射性物質)
の「安全三原則」のうちの一つでも欠ければ、大事故へつながってしまいます。
 つまり、頑強に建設された格納容器や原子炉建屋だけでなく、非常用発電機や敷地内の水道管、配線設備などの全ての施設・設備が、破損せず、正常に作動するかどうかが、耐震性の判断基準なのです。
 これを踏まえた上で、地震に対する電力会社とハウスメーカーの姿勢を比べます。

住宅は全国どこでも

 原発の耐震性を大きく上回るハウスメーカーは、全国どこでも住宅建設を手掛けなければならないことから、耐震性に関する論理は、極めて明快です。
 「5,115ガル」と突出した耐震性を誇る三井ホームの事例を紹介します。
 地震大国の日本では、どこでも大地震が起こることを大前提としています。
 世界の地震観測史上最大値と言われる「4,022ガル」(2008年岩手・宮城内陸地震)を上回る衝撃を受けても住宅の倒壊が生じないように、「震度7の地震に60回」も見舞われる過酷な3日間の実験を経て、木造2階建て住宅の「5,115ガル」を実現しているのです。
 その実験映像はユーチューブで公開しています。
https://youtu.be/4D-Rd1CfVP0
[食品と暮らしの安全 2021年11月号より了承を得て転載]

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