[2021_10_09_05]東電の入域管理や核物質防護担当者もずさん、柏崎刈羽原発の再稼働は不可能に ID不正使用と核物質防護設備の損傷放置について 9月22日の東電報告書に見る重大な劣化と安全神話の発現 東京電力に核物質を扱う資格はない (その4) (了) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年10月9日)
 
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東電の入域管理や核物質防護担当者もずさん、柏崎刈羽原発の再稼働は不可能に ID不正使用と核物質防護設備の損傷放置について 9月22日の東電報告書に見る重大な劣化と安全神話の発現 東京電力に核物質を扱う資格はない (その4) (了) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 
14.IDカードの定期更新をしていない

 報告書40頁には「IDカードの写真が古い、不鮮明等で人定確認しにくいことがあった。」との記載がある。およそ考えられない記述だ。
 この種のIDカードは一般に年に一度以上のサイクルで更新すべきものだが、そうなっていないのはあまりにもずさんだ。
 そのため劣化した写真で本人確認ができなくなったという。いやしかしそもそもIDカードの写真がそう簡単に劣化するだろうか。まさか紙の写真を張り付けたり挟んだしてはいないだろうね。全くいつの時代の話だろう。こうした行為は、簡単に偽造されたり盗まれたしてしまう。もはやセキュリティシステムとは言えない。

15.IDカード不正使用の聞き取り調査がひどい

 個人がどのように考えて行動したのかの報告も想像を絶するものだ。
 「IDカード不正使用者:運転員A」の聞き取り調査の回答では、「IDカードを紛失した事実を隠したかった。」「自分の行為の影響を軽く考えていた。その時は重大さに気付かず、何とか引継に間に合わせたいという思いで一杯だった。」とのことだが、紛失した場合、本来最初に考えて対処しなければならないことは、自分のIDカードが盗まれ、誰かがなりすまして入域し、核物質の摂取や発電所の破壊行為がなされるのではないかとの懸念である。
 そういうことに思いが至らないから、事態はおかしな方向に進展していった。
 他の運転員へのアンケートでは、問題を起こした社員に限定されるかのような回答が多々あったようだが、おかしい。
 これは個人の問題ではなく組織的なリスク管理の問題である。
 社員教育の実態が露呈した結果ではないか、IDカードを紛失することが、如何に発電所のみならず市民を危険にさらすことになるかの、リスク管理が全くできていない。やはり「そんなことは起きるはずがない」との、安全神話がまかり通ってる。

16.東電の入域管理や核物質防護担当者もずさん

 入域ゲートには下請けの原防職員以外にも東電の社員が見張人としてついている。その人物は「東電運転員が嘘を言うわけがないと思いこんだ。」と思ったのだという。しかし警備担当者は、そもそも性悪説に立たなければ警備などできない。たとえ総理大臣だろうと、入域許可証を持たなければ入れないとの姿勢で臨むのが警備担当者だ。
 また、防護管理GMは管理職にもかかわらず「Bゲート故障対応が何度も発生し、都度修理対応していることは気にかけていた」としつつ、これ自体が重大なセキュリティの劣化と捉えていなかった。設備の故障などは、最優先で対処しなければならないのに、原防との契約上の問題が生じたりしたこともあってか、対処が全くできていない。東電の現場管理にも驚くほどずさんな対応が多発している。

17.防災安全部長も存在意義が問われる対応

 発電所での最高責任者と思われる防災安全部長は「所員に対し、核セキュリティに関するメッセージを発信していたものの、現場の理解度や実践状況まで把握できていなかった。」という。これではそもそも任務放棄に当たる内容だ。
 発電所を運営して何十年もやってきて問題はなかった、といった安全神話が蔓延している。 「現場の理解度や実践状況」などは、定期的に現場に出て何人かにヒアリングを行っても把握できる。部長の確認行為が実施されていない。
 東電社員の上から下まで、何ら責任のある対応を持たない体質は、昨日今日醸成されたものではない。深刻な劣化は3.11以前から蔓延し、今も継続中だ。

18.下請けへの圧力もまた…

 入退域警備は、原子力防護システム株式会社、通称「原防」の社員が行っている。
 これを「委託見張人」と報告書では記載している。
 委託見張人は「東電社員に対して違和感があっても言いづらいという意識がある。」「東電運転員から過去にクレームを受けたケースを記憶しており、遠慮があった。」と答えている。下請け軽視の姿勢が見て取れる。
 こうした下請け軽視は、あらゆる安全リスクを生み出す元凶だが、それが福島第一原発事故を経てもなお解消されていない。
 労災事故の発生もこうした姿勢が背景にあることは多いと言われているが、核物質防護の場面でもあるということは極めて深刻だ。
 社員教育で欠落しているからそうなる。これについては再発防止などでも触れられていない。
 手順を守るといったところに内包されてしまっているのだとしたら大間違いだ。
 また、別の委託見張人の答えはさらに深刻だ。
 「名前は知らないが、よく見かける東電運転員であると認識していたので、東電の制服を着たテロリストといった可能性は考えなかった。」(インサイダの存在の無視)。
 これを疑わなければ警備の仕事は務まらない。むしろ内部の人間がそうした行為をするほうが多い。
 「制服にはIDカード記載と異なる当人の名前が刺繍されていたが、何度か同様の状況があったため、異常と捉えなかった。」これこそが防護の劣化代表例である。これを異常と捉えることは初歩的対処だ。
 「今回のようなケースで、協力企業の制服だったら、通過は認めず、社員見張人に相談した。」こうした社員への忖度は大きな劣化そのもの。
 ここに「東電社員のIDがすり替えられて詐取されたのではないか」(潜在的なアウトサイダの存在)といったさらに高次のセキュリティ劣化を想定して、当該職員に確認をすることをしなければ、警備の仕事にならない。そうした意識づけがないことが問題だ。
 また、東電社員はこうした対応になることを見越して、名前の違うIDカードを所持し、自分の制服を着てゲートを通ろうとしたものと思われる。

19.柏崎刈羽原発の再稼働は不可能に

 この現状は、原発の再稼働どころのレベルではない。防護すべき核物質が大量に保管されている柏崎刈羽の管理を東電に任せてよいのかといったレベルの問題だ。
 再稼働以前に、現在の核物質防護体制を立て直せるかどうか、深刻な問題であるのだが、その危機感さえ感じられない調査手法などについて、大いに疑問がある。
 これについて公聴会を開催し、地元だけでなく東京などの消費者にも説明をする機会を設けるべきである。
 いったいどのように理解を求めるつもりなのか。
 さらに追及していく必要がある。 (了)
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