[2021_10_09_03]首都圏 震度5強 M7級なら被害広範囲に 軟弱地盤、揺れやすく(東奥日報2021年10月9日)
 7日夜、首都圏を直下地震が襲った。マグニチュード(M)5.9と小ぶりだったが、突き上げるような最大震度5強の揺れが直撃し、鉄道や水道、電気は大混乱。軟らかい地層が厚く積もる河川沿いの被害が目立った。政府が想定するM7級の首都直下地震のエネルギーは今回の地震の数十倍。発生すれば、大きな被害が連続する「震災の帯」ができかねないとの懸念もある。
 震源は干葉市付近で深さ約75キロ。関東地方南部では「陸」「フィリピン海」「太平洋」という3枚のプレートが重なる。古村孝志東京大教授(地震学)は2枚の海洋プレートの境界で起きたと指摘する。震源が深いと、地上の広い範囲が揺れやすく「真上の千葉よりも埼玉、東京、横浜で強く揺れた」。
 気象庁によると震度5強を観測したのは東京都足立区、埼玉県川口市、同県宮代町。千葉市から遠い埼玉県北部でも5弱や4の揺れが広がった。
 関東学院大工学総合研究所の若松加寿江研究員(地震地盤工学)によると埼玉県春日部市、宮代町、東京都足立区、葛飾区などには地下に深い谷があり、海や河川が運んだ土砂で埋められている。川口市など荒川の流域も含め、地震で強く揺れやすい環境だ。
 「今回は規模が小さいので強い揺れの範囲も部分的だったが、問題は川沿いに帯のように続いていることだ「(若松さん)。もっと大きな地震が起きると、被害が広がる恐れがある。若松さんによると、こうした地域は関東大震災(1923年)でも大きな被害が生じたという。
 入倉孝次郎京都大名誉教授(強震動地震学)によると、今回の地震波は真下からやってきた。水平方向ならば地形の影響も受けるが、垂直方向では地盤の硬さが揺れの強さに直結する。地盤が弱いほど揺れる。「東京の地盤性質がよく分かったのではないか」と話す。
 入倉さんは1秒間に何度も揺れるタイプで、勢いを示す加速度も大きかった可能性を指摘する。木造住宅は揺れにくいが、水道管などが揺れやすい。東京都水道局によれば、都内23カ所で水道管の漏水が発生した。
 纐纈一起慶応大特任教授(応用地震学)は「想定されている首都直下の大型地震は今回の数十倍の規模。今回程度の地震で電車が運休し、帰宅困難者が多く発生するのは問題だ」と指摘し、対策強化を求めている。

KEY_WORD:首都圏震度5強_軟弱地盤の影響_:KANTOUDAISHINSAI_: